万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2318)―

●歌は、「片貝の川の瀬清く行く水の絶ゆることなくあり通ひ見む」である。

富山県魚津市黒谷 片貝川黒谷橋畔万葉歌碑(大伴家持) 20230705撮影

●歌碑は、富山県魚津市黒谷 片貝川黒谷橋畔にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆可多加比能 可波能瀬伎欲久 由久美豆能 多由流許登奈久 安里我欲比見牟

       (大伴家持 巻十七 四〇〇二)

 

 

≪書き下し≫片貝(かたかひ)の川の瀬清く行く水の絶ゆることなくあり通(がよ)ひ見む

 

(訳)片貝の川瀬も清く流れ行く水のように、絶えることなく、ずっと通い続けてこの山を見よう。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)上三句は序。「絶ゆることなく」を起す。長歌の「川」を承ける。(伊藤脚注)

(注)ありがよふ【有り通ふ】自動詞:いつも通う。 ※通い続ける。「あり」は継続の意の接頭語。(学研)

                           

四〇〇〇~四〇〇二の題詞は、「立山賦一首并短歌  此山者有新河郡也」<立山(たちやま)の賦(ふ)一首幷(あは)せて短歌   この山は新川の郡に有り>である。

(注)立山富山県の東南部に聳える立山連峰越中国府から眺望できる。(伊藤脚注)

(注)ふ【賦】〘名〙:① 割り当てること。割りつけること。配ること。② みつぎもの。年貢。租税。また、賦役。③ 「詩経」の六義(りくぎ)の一つで、比・興とともに、表現上の方法の分類を示すもの。事実や風景、心に感じたことなどをありのままに述べたもの。④ 漢詩になぞらえて、紀貫之がいう和歌の六義の一つ。ありのままに詠むもので、仮名序のかぞえ歌に相当する。⑤ 漢文の韻文体の一つ。事物の様子をありのままに表わし、自分の感想を付け加えるもの。対句を多く用い、句末は必ず韻を踏む。⑥ 転じて、広く一般的に韻を含んだ詩文。※万葉(8C後)一七・三九八五・題詞「二上山賦一首」⑦ 俳文で、⑤の様式をとり入れ、故事や成句などを交じえ、対句を多く用い自分の感想などを述べるもの。

コトバンク 精選版 日本国語大辞典)ここでは⑥の意

(注)新川郡:越中の東半分を占める大郡。(伊藤脚注)

 

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 四〇〇〇~四〇〇二歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その2313)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

 歌碑の横には「歌碑建立の由来」に碑が立てられている。

 「歌碑建立の由来」の碑には、四〇〇二歌は、「片貝川産の自然石に刻した」と書かれている。この付近の川原には、雪解けの大量の水に押し流され白っぽく丸く削られた石がゴロゴロしているのが目についたのである。

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「コトバンク 精選版 日本国語大辞典

★「グーグルマップ」