万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2322)―

●歌は、「立山の雪し来らしも延槻の川の渡り瀬鐙漬かすも」である。

富山県魚津市三ケ 魚津総合公園万葉歌碑(大伴家持) 20230705撮影

●歌碑は、富山県魚津市三ケ 魚津総合公園にある。

 

●歌をみていこう。

 

 題詞は、「新川郡渡延槻河時作歌一首」<新川(にひかは)の郡(こほり)にして延槻川(はひつきかは)を渡る時に作る歌一首>である。

(注)新川郡:越中の東半分を占める大郡。(伊藤脚注)

(注)延槻川:立山剣岳から発する早月川。(伊藤脚注)

 

◆多知夜麻乃 由吉之久良之毛 波比都奇能 可波能和多理瀬 安夫美都加須毛

      (大伴家持 巻十七 四〇二四)

 

≪書き下し≫立山(たちやま)の雪し来らしも延槻の川の渡り瀬(せ)鐙(あぶみ)漬(つ)かすも

 

(訳)立山の雪が解けてやって来たのであるらしい。この延槻の、川の瀬でも、ふえた水かさで鐙(あぶみ)を浸すばかりだ。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)雪し来らしも:雪が早くも消えてやって来たのであるらしい、の意。(伊藤脚注)

(注)あぶみ【鐙】名詞:馬具の一つ。鞍(くら)の両脇(りようわき)に垂らして、乗る人が足を踏みかけるもの。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)「漬かすも」:「漬く」に対する使役性動詞。浸らせる。(伊藤脚注)

 

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 この歌については、直近では、万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2317)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

魚津総合公園」については、魚津市観光協会HPに次のように紹介されている。

魚津総合公園魚津市の西南端を流れる早月川の河口に位置する、昭和59年3月に完成したレジャー公園です。背後には、遠く立山連峰が、そして前面には、富山湾が一望できる景勝の地にあります。

主要施設は、日本海側有数規模を誇る水族館、ミラージュランドの遊具施設、海水プールを中心とした水の広場、パークゴルフ場、テニスコート等があります。公園内には無料遊具や無料休憩所『みんなのみなと』のほか桜も植えられていて桜の名所にもなっています。

魚津総合公園は、市民の憩いの場として、また観光名所として市内外からの来園者で賑います。」

 水族館の隣の公園の一角にこの歌碑が立てられている。まずその高さに圧倒される。

魚津総合公園万葉歌碑 歌碑説明案内板と副碑 20230705撮影

 

 碑の横には歌碑説明案内板が立てられている。歌碑そのものの説明は紙に書かれたものが貼ってあった。

 また、碑の向かって右やや後ろ方向に副碑がある。



 

 総合公園は、延槻川(早月川)の富山湾への河口部に展開している広大なエリアである。ほぼ中央部に水族館がありその近くの公園ゾーンに歌碑が立てられている。

 この歌碑は、高さ4.5mと、富山県内に100か所以上ある万葉歌碑の中で最大といわれている。副碑にも書かれているように、昭和29年(1954年)に魚津市文化財保存会によって早月川近くに建立されたが、1980年に現在の場所に移設されたとある。

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「魚津市観光協会HP」