●枕詞の「うまさけ」は、味酒あるいは、旨酒と書かれる。味の良い上等な酒を「神酒(みわ)(=神にささげる酒)」にすることから、「神酒(みわ)」と同音の地名「三輪(みわ)」に、また、「三輪山」のある地名「三室(みむろ)」「三諸(みもろ)」
などにかかる。大神神社は日本最古の神社であり、名のとおりお酒に関わりの強い神社である。
●歌は、「うま酒三輪の祝(社)の山照らす秋の黄葉散らまく惜しも」である。
●歌碑は、大神神社境内の宝物殿の横にある。
●歌をみていこう。
◆味酒 三輪乃祝之 山照 秋乃黄葉乃 散莫惜毛)
(長屋王 巻八 一五一七)
≪書き下し≫味酒(うまさけ)三輪の社(やしろ)の山照らす秋の黄葉(もみち)の散らまく惜しも
(注)「『萬葉集』 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)」では、「三輪乃祝之(みわのはふりが)」となっているが、伊藤 博氏は、「類聚古集」の「社」を採用されている。
(訳)三輪の社(やしろ)の山を照り輝かしている秋のもみじ、そのもみじの散ってしまうのが惜しまれてならぬ。(伊藤 博著「万葉集 二」角川ソフィア文庫より)
(注)うまさけ【味酒・旨酒】分類枕詞:味のよい上等な酒を「神酒(みわ)(=神にささげる酒)」にすることから、「神酒(みわ)」と同音の地名「三輪(みわ)」に、また、「三輪山」のある地名「三室(みむろ)」「三諸(みもろ)」などにかかる。「うまさけ三輪の山」
参考枕詞としては「うまさけの」「うまさけを」の形でも用いる。(学研)
(注の注)うまさけ【味酒・旨酒】名詞:味のよい上等な酒。うまい酒。(学研)
(注)はふり【祝】名詞:神に奉仕することを職とする者。特に、神主(かんぬし)や禰宜(ねぎ)と区別する場合は、それらの下位にあって神事の実務に当たる職をさすことが多い。祝(はふ)り子。「はうり」「はぶり」とも。 (学研)
大神神社は、毎年正月には、お酒と玉子を持ってお参りしている。
大神神社のHPによると、「ご祭神の大物主大神(おおものぬしのおおかみ)がお山に鎮まるために、古来本殿は設けずに拝殿の奥にある三ツ鳥居を通し三輪山を拝するという原初の神祀りの様を伝える我が国最古の神社です」とある。
毎年、拝殿にお参りをして、巳の神杉(同HPによると、大物主大神の化身とされる白蛇が棲むことから名付けられたご神木。樹齢500年とも言われる。蛇の好物の卵が参拝者によってお供えされている)にお参りをして、おみくじを引くのが恒例になっている。それから、破魔矢とお守りを購入し、祈祷殿横に置かれた、なでウサギを、文字通りなでて家路につくのである。
歌碑めぐりの日は、例祭の準備があるらしく、拝殿前には大きなテントが張られ、椅子が多数並べられていたので、拝殿の写真は撮れなかった。1月に撮影したものを掲載する。
●酒造りは三輪の地からはじまった
「酒の聖地三輪観光HP」に下記のような、興味深い記事があったので紹介させていただく。
酒造り発祥の地「三輪」
酒造りは三輪の地からはじまったといわれています。酒造りを話す上で欠かせない場所がここ三輪にある大神神社です。大神神社は日本最古の神社で、本殿を持たず、三輪山をご神体として奉っている神社です。
三輪山は古来から「三諸山(みむろやま)」と呼ばれ、「うま酒みむろの山」と称されるは「みむろ・・実醪」すなわち「酒のもと」の意味で、酒の神様としての信仰からの呼び名であるとも言われています。
そのため毎年11月14日には大神神社に全国中から蔵元・杜氏が集まり「醸造祈願祭(酒まつり)」が行われます。境内では振舞酒も行われ、多くの参拝客・観光客でにぎわい、また醸造祈願祭の後には全国中の蔵元へ杉玉が配られていきます。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「weblio古語辞書」
★「大神神社HP」
★「酒の聖地三輪観光HP」
※202304010朝食関連記事削除、一部改訂