●歌は、「君を待つ 松浦の浦の 娘子らは常世の国の 天娘子かも」
●歌碑は、奈良県高市郡明日香村 万葉文化館庭園にある六つの歌碑の六つ目である。
訪問した時（６月３０日）は庭園内のアジサイが満開であった。
●歌をみていこう（一字一音表記になっている）。
◆伎弥乎麻都 ゝゝ良乃于良能 越等賣良波 等己与能久尓能 阿麻越等賣可忘
（吉田連宣 巻五 八六五）
≪書き下し≫君を待つ松浦（まつら）の浦の娘子（をとめ）らは常世（とこよ）の国の海人娘子（あまをとめ）かも
（訳）あなたをお待ちしている松浦の浦の娘子たちは、常世の国の海人（あま）娘子なのでしょうか。（伊藤 博 著 「万葉集一」 角川ソフィア文庫より）
この歌が収録されている万葉集巻五は特異な巻である。大伴旅人と山上憶良の二人に関わるものが中心となっている。しかも年次は神亀五年（７２８年）から天平五年（７３３年）という短い期間のものが中心となっている。さらに、歌は「一字一音」の仮名で書かれている。
万葉集目録「万葉集巻第五」をみてみると次のようになっている。大伴旅人と山上憶良の二人に関わるものが中心となっていることがわかる。
雑歌
太宰帥大伴卿、凶問に報ふる歌一首
山上臣憶良、惑情を反さしむる歌一首 幷せて短歌
山上臣憶良、子等を思ふ歌一首 幷せて短歌
山上臣憶良、世間の住み難きことを哀しぶる歌一首 幷せて短歌
太宰帥大伴卿が相聞歌二首
答ふる歌二首
帥大伴卿、梧桐の日本琴を中衛大将藤原卿に贈る歌二首
中衛大将藤原卿が報ふる歌一首
山上憶良、鎮懐石を詠む歌一首 幷せて短歌
太宰帥大伴卿が宅の宴の梅花の歌卅二首 幷せて序
故郷を思ふ歌二首
後に梅花の歌に追ひて和ふる四首
松浦の河に遊びて贈答する歌二首 幷せて序
蓬客等の更に報ふる歌三首
娘等が更に報ふる歌三首
帥大伴卿が追和の歌三首
吉田連宜、梅花の歌に和ふる一首
吉田連宜、松浦の仙媛の歌に和ふる一首
吉田連宜、君を思ふこと尽きずして、重ねて題す歌二首
山上憶良が松浦の歌三首
領巾摩の嶺を詠む歌一首
後人の追和の歌一首
最後人の追和の歌一首
最ゝ後の追和の歌二首
書殿にして餞酒する日の和歌四首
敢えて私懐を布ぶる歌
三嶋王、後に松浦佐容媛の歌に追和する一首
大典麻田連陽春、大伴君熊凝の為に志を述ぶる歌二首
山上臣憶良、熊凝の為に志を述ぶる歌に和ふる一首 幷せて短歌
貧窮問答の歌一首 幷せて短歌
山上臣憶良が好去好来の一首 幷せて短歌
山上臣憶良が沈痾自哀の文一首
山上臣憶良、俗道の仮合即離し、去り易く留め難きことを悲嘆しぶる詩一首 幷せて序
山上臣憶良、重病にして児等を思ふ歌一首 幷せて短歌
男子名は古目に恋ふる歌一首 幷せて短歌
吉田連宜（よしだのむらじよろし）は、梅花歌三二首（八一五～八四六歌）幷序（この序が新元号「令和」の出典元である）、故郷を思ふ歌二首（八四七～八四八歌）、後に梅花の歌に追ひて和ふる四首（八四九～八五二歌）ならびに松浦川に遊ぶ序と歌（八五三～八六三歌）を贈られて、返書（八六四歌の前の「宜啓 伏奉四月六日賜書・・・謹付片紙 宜謹啓 不次」とともに「和歌」（八六四～八六七歌）を作っているのである。
八六四歌の題詞は、「奉和諸人梅花歌一首」＜諸人（しょじん）の梅花の歌に和（こた）へ奉（まつ）る一首＞であり、八六五歌の題詞は、「和松浦仙媛歌一首」＜松浦（しょうほ）の仙媛（せんゑん）の歌に和（こた）ふる一首＞である。さらに、八六六、八六七歌の題詞は「思君未盡重題二首」≪君を思ふこと尽きずして、重ねて題（しる）す二首＞となっている。
（参考文献）
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 （桜楓社）
★「万葉集をどう読むか―歌の『発見』と漢字」 神野志隆光 著 （東京大学出版会）
●本日のザ・モーニングセット＆フルーツフルデザート
サンドイッチは、サンチュとトマトそれに焼き豚である。デザートは、キウイの縦切りスライスを中心に配し、周りを、バナナスライスの上に、トンプソンとクリムゾンシードレスで加飾した。
