●歌は、「かはづ鳴く神なび川に影見えて今か咲くらむ山吹の花」である。
●歌碑は、京都府相楽郡精華町 けいはんなプラザ前植込み にある。
●歌をみていこう。
◆河津鳴 甘南備河尓 陰所見而 今香開良武 山振乃花
(厚見王 巻八 一四三五)
≪書き下し≫かはづ鳴く神なび川に影見えて今か咲くらむ山吹の花
(訳)河鹿の鳴く神なび川に、影を映して、今頃咲いていることであろうか。岸辺のあの山吹の花は。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)
(注)神なび川:神なびの地を流れる川。飛鳥川とも竜田川ともいう。
山吹の歌は、万葉集のなかでは、十七首詠われているという。そのあでやかな美しさから女人への連想や比喩にも用いられているという。
この歌のように、黄色く影を映す川面の情景が、色鮮やかによみがえってくるのである。
山吹を詠った歌としては、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その74)」で高市皇子の「十市皇女薨時高市皇子尊御作歌三首」<十市皇女(といちのひめみこ)の薨(こう)ぜし時に、高市皇子尊(たけちのみこのみこと)の作らす歌三首>とする題詞の歌を一首取り上げている。
歌をここでもみてみよう。
◆山振之 立儀足 山清水 酌尓雖行 道之白鳴
(高市皇子 巻二 一五八)
≪書き下し≫山吹(やまぶき)の立ちよそひたる山清水汲みに行かめど道の知らなく
(訳)黄色い山吹が咲き匂っている山の清水、その清水を汲みに行きたいと思うけれど、どう行ってよいのか道がわからない。(伊藤 博著「万葉集 一」角川ソフィア文庫より)
(注)「山吹」に「黄」を、「山清水」に「泉」を匂わす。
これについては、次のような記事がある。
「日時計広場は、先進性・国際性を目指す都市の中核施設にふさわしいシンボル空間として、国際コンペを実施し、設計されました。日時計の文字盤面積(3,877.86m²)は、世界一としてギネスブックに掲載されています。」(電子かわら版~京都府景観資産~№12 平成27年2月 発行:京都府建設交通部都市計画課)
日時計は、電子かわら版にギネス世界一と記されていたが、この歌碑は、植込みの中に立てられたほぼA4サイズの瓦板に焼き付けられた小さな歌碑である。他と異なるのは、瓦板が2枚セットになっており、向かって左には、国際性を目指す都市だけに、英語で記されている。
ただ残念なことに、どちらも文字が完全に認識できない。英語版の右下隅の「8-1435」を手掛かりに歌にたどり着けたのである。
メタセコイヤの並木道の精華大通りと巨大日時計に挟まれた、小さな小さな歌碑が印象的であった。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「万葉の大和路」 犬養 孝/文 入江泰吉/写真 (旺文社文庫)
★「電子かわら版~京都府景観資産~№12 平成27年2月」
(発行:京都府建設交通部都市計画課)
※20210501朝食関連記事削除、一部改訂