●歌は、「山背の久世の鷺坂神代より春は萌りつつ秋は散りけり」である。「古代城陽を詠んだ万葉歌(3)」である。
●歌をみてみよう。これは、京都府城陽市久世の久世神社の歌碑と同じであり、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その195)」で紹介している。
◆山代 久世乃鷺坂 自神代 春者張乍 秋者散来
(作者未詳 巻九 一七〇七)
≪書き下し≫山背(やましろ)の久世(くせ)の鷺坂(さぎさか)神代(かみよ)より春は萌(は)りつつ秋は散りけり
(訳)山背の久世の鷺坂、この坂では、遠い神代の昔から、春には木々が芽吹き、秋には散って来たのである。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)
(注)はる【張る】①(氷が)はる。一面に広がる。②(芽が)ふくらむ。出る。芽ぐむ。
※ここでは②の意
(注)さぎざか【鷺坂】: 京都府城陽市久世を南北に走る旧大和街道の坂。坂のある台地が鷺坂山であり、丘上に久世神社がある。(コトバンク 精選版 日本国語大辞典)
題詞は、「鷺坂作歌一首」<鷺坂にして作る歌一首>である。
巻九にはこの題詞「鷺坂作歌一首」の歌が、三首ある。一六八七歌、一六九四歌そしてこの一七〇七歌である。
この前後の題詞も同様である。例えば「泉河邊・・・」は、一六八五歌、一六九五歌、一七〇八歌である。「名木河・・・」は、一六八八歌、一六九六歌である。
巻九は、人麻呂歌集、虫麻呂歌集、金村歌集、福麻呂歌集といった歌集が収録されている。巻全体一四八首の六割をこえる九四首がこれらの歌集で成り立っている。歌集のうえに成り立っている巻九である。
ただ、題詞「鷺坂作歌」に見られるように、歌集の歌群的要素がブロックとして存在しており、季節性でもなく、何らかの意図があるように思えるが、残念ながらわからない。
巻九の巻頭の天皇(一六六四歌)は巻一と同じであり、歌集を母体としたミニ万葉集的要素をはらんでいるともいえる。
こういった巻九を組み込んでいるところにも万葉集の万葉集たる所以があるのかもしれない。
参考までに、一六六四歌から一七一一歌までは、題詞と左注を細かく掲げた。一七一二歌から一八一一歌までは左注を抜き出した。題詞「鷺坂作歌」にはアンダーラインをした。
万葉集巻第九
【雑歌】
◆一六六四
(左注)右或本云崗本天皇御製 不審正指 因家良霜
◆一六六五、一六六六
(左注)右二首作者未詳
(題詞)大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首
◆一六六七
(左注)右一首上見既畢 但歌辞小換 年代相違 以累載
◆一六六八~一六七三
(左注)右一首山上臣憶良類聚歌林日 長忌寸意吉麻呂應詔依作此歌
◆一六七四~一六七九
(題詞)後人歌二首‘
◆一六八〇、一六八一
(題詞)獻忍壁皇子歌一首 詠仙人形
◆一六八二
(題詞)獻舎人皇子歌二首
◆一六八三、一六八四
(題詞)泉河邊間人宿祢作歌二首
◆一六八五、一六八六
(題詞)鷺坂作歌一首
◆一六八七
(題詞)名木河作歌二首
◆一六八八、一六八九
(題詞)高島作歌二首
◆一六九〇、一六九一
(題詞)紀伊國作歌二首
◆一六九二、一六九三
(題詞)鷺坂作歌一首
◆一六九四
(題詞)泉河作歌一首
◆一六九五
(題詞)名木河坂三首
◆一六九六~一六九八
(題詞)宇治河作歌二首
◆一六九九、一七〇〇
(題詞)獻弓削皇子歌三首
◆一七〇一~一七〇三
(題詞)獻舎人皇子歌二首
◆一七〇四、一七〇五
(題詞)舎人皇子御歌一首
◆一七〇六
(題詞)鷺坂作歌一首
◆一七〇七
(題詞)泉河邊作歌一首
◆一七〇八
(題詞)獻弓削皇子歌一首
◆一七〇九
(左注)右柿本朝臣人麻呂歌集所出
◆一七一〇、一七一一
(左注)右二首或云柿本朝臣人麻呂作
◆一七一二~一七一九歌
◆一七二〇~一七二五歌
(左注)右柿本朝臣人麻呂歌集出
◆一七二六~一七三七歌
◆一七三八~一七六〇歌
(左注)右件歌者高橋連虫麻呂歌集中出
◆一七六一~一七六五歌
【相聞】
◆一七六六~一七七二歌
◆一七七三~一七七五歌
(左注)右三首柿本朝臣人麻呂之歌集出
◆一七七六~一七七九歌
◆一七八〇~一七八一歌
(左注)右二首高橋連虫麻呂之歌中出
◆一七八二~一七八三歌
(左注)右二首柿本朝臣人麻呂之歌中出
◆一七八四歌
◆一七八五~一七八九歌
(左注)右件五首笠朝臣金村之歌中出
◆一七九〇~一七九一歌
◆一七九二~一七九四歌
(左注)右三首田辺福麻呂之歌集出
【挽歌】
◆一七九五~一七九九歌
(左注)右五首柿本朝臣人麻呂之歌集出
◆一八〇〇~一八〇六歌
(左注)右七首田辺福麻呂之歌集出
◆一八〇七~一八一一歌
(左注)右五首高橋連虫麻呂之歌集中出
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「万葉集をどう読むか―歌の『発見』と漢字世界」 神野志隆光 著 (東京大学出版会)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」
●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート
サンドイッチは、フランスパンを使いオープンサンドにした。サニーレタス、焼き豚、玉ねぎのオムレツである。デザートは、下記のスライスを四つ花弁のように並べバナナ、赤と緑のブドウの切合わせで加飾した。