●歌は、「み薦刈る信濃の真弓我が引けば貴人さびていなと言はむか」である。
●歌をみてみよう。
この歌は、久米禅師が石川郎女を娶る時に交わされた五首のうちの歌である。ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その208)」では、五首すべてを紹介している。
◆水薦苅 信濃乃真弓 吾引者 宇真人作備而 不欲常将言可聞 (禅師)
(久米禅師 巻二 九六)
≪書き下し≫み薦(こも)刈(か)る信濃(しなの)の真弓(まゆみ)我(わ)が引かば貴人(うまひと)さびていなと言はむかも
(訳)み薦刈る信濃、その信濃産の真弓の弦(つる)を引くように、私があなたの手を取って引き寄せたら、貴人ぶってイヤとおっしゃるでしょうかね。 (禅師) (伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)
(注)みこもかる 【水菰刈る】分類枕詞:水菰がたくさん生えていて、それを刈り取る地の意で、「信濃(しなの)」にかかる。
(注)みこも【水菰・水薦】水中に生えているマコモ。 (三省堂 大辞林 第三版)
(注)引かば:手に取って引き寄せたら
(注)まゆみ 名詞:①【檀】木の名。にしきぎに似ていて、秋に紅葉する。強靫(きようじん)な幹を弓の材料とするところからこの名があり、また、樹皮からは紙を作った。
②【檀弓・真弓】①を用いて作った丸木の弓。
万葉時代の「檀(まゆみ)」は、弓の素材として使われていた。「檀」で作った弓の持ち手部分に桜皮や皮を巻いて完成させるのである。弓の材料としての「檀」は他の木材よりも優れていたようで、「檀」で作られた弓は、讃美の接頭語「ま」をつけて真弓(まゆみ)と呼ばれるようになり、材料である「檀」も「まゆみ」と呼ばれるようになったようである。
「檀」で作った弓の持ち手部分の桜皮や皮を巻く、「弓束巻く」を詠みこんだ歌をみてみよう。
◆南淵之 細川山 立檀 弓束纒及 人二不所知
(作者未詳 巻七 一三三〇)
≪書き下し≫南淵(みなぶち)の細川山(ほそかはやま)の立つ檀(まゆみ)弓束(ゆづか)巻くまで人に知らえじ
(訳)南淵の細川山に立っている檀(まゆみ)の木よ、お前を弓に仕上げて弓束を巻くまで、人に知られたくないものだ。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)
(注)檀の木:目をつけた女の譬え。
(注)弓束巻く:弓を握る部分に桜皮や革を巻き付けること。契りを結ぶことの譬え。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「植物で見る万葉の世界」 國學院大學 萬葉の花の会 著 (同会 事務局)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」
●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート
サンドイッチは、レタスと焼き豚である。デザートは、ミカンの輪切りを4枚並べ、キウイで隅をうめ、バナナのカットを4か所に置き、その上に赤と緑のブドウのスライスを積み上げブドウ塔を作った。