万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(2263)―

●歌は、「なでしこがその花にもが朝な朝な手に取り持ちて恋ひぬ日なけむ」である。

    石川県羽咋郡宝達志水町臼が峰往来(石仏峠)万葉歌碑(大伴家持

             20230704撮影

●歌碑は、石川県羽咋郡宝達志水町臼が峰往来(石仏峠)にある。

 

●歌をみていこう。

 

 題詞は、「大伴宿祢家持贈同坂上家之大嬢歌一首」<大伴宿禰家持、同じき坂上家(さかのうえのいへ)の大嬢(おほいらつめ)に贈る歌一首>である。

 

◆石竹之 其花尓毛我 朝旦 手取持而 不戀日将無

       (大伴家持 巻三 四〇八)

 

≪書き下し≫なでしこがその花にもが朝(あさ)な朝(さ)な手に取り持ちて恋ひぬ日なけむ

 

(訳)あなたがなでしこの花であったらいいんいな。そうしたら、毎朝毎朝、この手に取り持って賞(め)でいつくしまない日とてなかろうに。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)

(注)なでしこがその花にもが:あなたがなでしこの花であったらなあ。「なでしこ」はかわらなでしこ。家持が特に愛した花。(伊藤脚注)

(注の注)もが 終助詞:《接続》体言、形容詞・助動詞の連用形、副詞、助詞などに付く。〔願望〕…があったらなあ。…があればなあ。 ⇒参考:上代語。上代には、多く「もがも」の形で用いられ、中古以降は「もがな」の形で用いられた。⇒もがな・もがも(学研)

(注)「恋ふ」は、ここはめでいつくしむの意。(伊藤脚注)

 

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感想(1件)

 なでしこは、万葉集では二十六首が収録されている。なでしこをこよなく愛好した家持は十一首詠っている。これについては、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1808)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

                           

 

 

■石川県羽咋郡宝達志水町臼が峰往来(石仏峠)の万葉歌碑■


 本稿から、石川県羽咋郡宝達志水町臼が峰往来(石仏峠)の万葉歌碑の紹介である。

 

 「臼が峰往来」とは、宝達志水町 商工観光課HP「はじまる町宝達志水町 観光サイト」によると、「古代(奈良・平安)以来の官道。下石、深谷、見砂を経て越中氷見(国府)に至る旧往来を『臼ヶ峰往来』、又は『御上使往来』と呼んでいます。

越中国大伴家持能登巡見の折に詠んだとされる歌が万葉集に収められています。

「之乎路から 直越え来れば羽咋の海 朝凪ぎしたり船楫もがも」

臼ヶ峰は標高わずか265メートルですが、頂上からは富山湾立山連峰、邑知潟などが眺望され、指定された道は下石から臼ヶ峰までは約4キロメートルで、富山県氷見市日名田の関所跡へと続いています。

 車では、氷見市床鍋から車道にて、山頂まで通行可能です。(駐車場有り)

宝達志水町側の『下石』、『深谷』、『石仏』においては、駐車場はありませんのでご了解ください。」と書かれている。

 

 富山県氷見市日名田の「臼が峰往来」入口の万葉歌碑を訪れたのは2020年11月4日であった。先達のブログなどを見て、臼が峰山頂や下石、石仏付近には、数多くの万葉歌碑が立てられていることは知っていたが、「臼が峰往来」を実際に踏破しないと撮影できないと思っていたし、「臼が峰往来」入口の上り坂を見て、辿り着くのは不可能だと思い知らされた。


いつかは行ってみたいという思いは強かった。

 

 「臼が峰往来」入口の万葉歌碑ならびに歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その810)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

 今回、なんとか挑戦できないかといろいろ調べなおしてみた。

宝達志水町 商工観光課HPをみて、山頂までは車で行くことが出来ると確信、ルートを探った。問題は、石川県側である。

グーグルマップでストリートビューを活用し探索を続ける。「下石」は問題なく行ける。

次に「石仏峠」を入力しルートを検索。確かに駐車場はないが、車で行けそうである。

ストリートビューでも歌碑群を確認できたのである。

「下石」→「石仏峠」→「臼が峰山頂公園」とつながったのである。夢のようである。

 

「下石の歌碑」から「石仏峠」ルート グーグルマップより引用させていただきました

 

 

■7月4日の行程概略■

 できる限り午前中に到着し、ゆとりをもった行動をとりたいという思いから、3時出発計画で夜中の1時半に目覚ましをセット。

早めに床に就くもなかなか寝付けない。いくつになってもこういった行事の前日はわくわくである。予定通り起床。2時50分、自宅を出発。

途中のPA、SAでちょこちょこ仮眠をとりながらのドライブである。

 

 9時現地到着。下石の歌碑を撮影、さらに近くの歌碑群5基の撮影を終え「石仏峠」へ。

万葉時代、大伴家持も通ったといわれている「臼が峰往来」のほぼ中間点がここ石仏峠である。

途中「熊出没注意」の看板が目に入った。(今回も撮影してこなかった)

 我々夫婦以外の人は見かけず。万葉ゆかりのこの古道の地を独占である。鳥のさえずりを聞きながらの撮影である。

このような山奥であるが、手入れが行き届いているのには驚かされた。歌碑の前の雑草を刈る必要もあるのではと、軍手と花ばさみは用意していったのであったが使わずじまいであった。地元有志の方々の古道や歌碑への熱い思いが伝わってくる。

ありがとうございます。

 

 この地は、時間・空間を超越した万葉ゾーンである。

あちこち移動しながら撮影をする。万葉ゾーンに立ち入ることが許されたそんな感じがするのである。

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「はじまる町宝達志水町 観光サイト」 (宝達志水町 商工観光課HP)

★「グーグルマップ」