万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その78改)―奈良県桜井市金屋磯城瑞籬宮(しきみずがきのみや)址―万葉集 巻十三 三二四九

●歌は、「磯城島の日本の国に二人ありとし思はば何か嘆かむ」である。  

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磯城瑞籬宮址万葉歌碑(作者未詳)


 ●歌碑は、奈良県桜井市金屋磯城瑞籬宮(しきみずがきのみや)址にある。 

 

●歌をみていこう。

 

◆式嶋乃 山跡乃土丹 人二 有年念者 難可将嗟

              (作者未詳 巻十三 三二四九)

 

≪書き下し≫磯城島(しきしま)の国に人ふたりありとし思はば何か嘆かむ

(訳)この磯城島の大和の国に、あの方というお方が二人あると思うことができたら、何でこんなに嘆いたりなどしようか。

 

 三二四九歌は部立「相聞」の先頭歌三二四八歌(長歌)の反歌となっている。

 

 三二四八歌をみていこう。

◆式嶋乃 山跡乃土丹 人多 満而雖夕 藤浪乃 思纒 若草乃 思就西 君目二 戀八将明 長此夜乎

               (作者未詳 巻十三 三二四八)

 

≪書き下し≫磯城島(しきしま)の 大和(やまと)の国に 人さはに 満ちてあれども 藤浪(ふじなみ)の 思ひもとほり 若草の 思ひつきにし 君が目に 恋ひや明かさむ 長きこの夜(よ)を

(訳)この磯城島の大和の国に、人はいっぱいに満ち満ちているけれども、まつわりついて咲く藤の花のように心がまつわりついて萌え出した若草の色が目につくように心が寄りついて離れない方、あの方と目を見合わすことだけに心を尽くしながら明かすことになるのか。長い長いこの夜を。

(注)さはに【多に】:たくさん

(注)藤浪の:「思ひもとほり」の枕詞

(注)若草の:「思ひつきにし」の枕詞

 

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崇神天皇磯城瑞籬宮址の碑


            

 志貴御懸坐(しきのみあがたいます)神社境内に「磯城瑞籬宮跡」の碑が建てられている。

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志貴御懸神社鳥居

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志貴御懸神社拝殿

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志貴御懸神社社殿

 境内の案内説明板によると、磯城瑞籬宮とは、「第十代崇神(すじん)天皇の皇居跡と伝えられています。神山・三輪山を背後に負い、歌垣の伝えで名高い海柘榴市を却下に控えて、大和平野を見渡す高燥の地です。東へは、泊瀬道(はつせみち)、伊勢を経て東国へ。南へは、磐余道(いわれみち)、飛鳥を通じて紀伊方面へ。

北へは、山の辺の道、奈良、京を経て北陸、日本海方面へ。西へは、大和川の水運を利用して難波(なにわ)、瀬戸内海方面に繋がる交通の要衝です。古代大和王権、発展の拠点であったとも場所です。」とある。

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉歌碑めぐり」(桜井市HP)

★「weblio 古語辞書」 

 

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