万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その2128)―①-5 奈良県桜井市万葉歌碑(1)―山の辺の道(二)

(一社)桜井市観光協会HPには、「山の辺の道は、奈良盆地の山裾を縫うように南北に走る古道で、歌垣(うたがき)で知られる海石榴市(つばいち)から、三輪、柳本を経て石上神宮に至るコースを一般的に『山の辺の道』と呼んでいます。本来は更に奈良へと北上する道で日本最古の道といわれています。

 道沿いには記紀・万葉に登場する名所旧跡が、数多く、神話や古代ロマンの世界へといざなってくれます。ゆっくり歩きながら 眼下にひろがる奈良盆地の中に浮かぶ大和三山や、二上山の眺望を楽しみながら、道のわきに建つ万葉歌碑で万葉びとの息吹を感じることができる古道です。」と書かれている。

 

 前稿に引き続き、大神神社から海石榴市までの歌碑をみていこう。

大神神社宝物殿横万葉歌碑(巻八 一五一七)

大神神社宝物殿横万葉歌碑(長屋王

●歌をみていこう。

 

◆味酒 三輪乃祝之 山照 秋乃黄葉乃 散莫惜毛)   

        (長屋王 巻八 一五一七)

 

≪書き下し≫味酒(うまさけ)三輪の社(やしろ)の山照らす秋の黄葉(もみち)の散らまく惜しも

(注)「『萬葉集』 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)」では、「三輪乃祝之(みわのはふりが)」となっているが、伊藤 博氏は、「類聚古集」の「社」を採用されている。

 

(訳)三輪の社(やしろ)の山を照り輝かしている秋のもみじ、そのもみじの散ってしまうのが惜しまれてならぬ。(伊藤 博著「万葉集 二」角川ソフィア文庫より)

(注)うまさけ【味酒・旨酒】分類枕詞:味のよい上等な酒を「神酒(みわ)(=神にささげる酒)」にすることから、「神酒(みわ)」と同音の地名「三輪(みわ)」に、また、「三輪山」のある地名「三室(みむろ)」「三諸(みもろ)」などにかかる。「うまさけ三輪の山」 ⇒参考:枕詞としては「うまさけの」「うまさけを」の形でも用いる。(学研)

(注の注)うまさけ【味酒・旨酒】名詞:味のよい上等な酒。うまい酒。(学研)

(注)はふり【祝】名詞:神に奉仕することを職とする者。特に、神主(かんぬし)や禰宜(ねぎ)と区別する場合は、それらの下位にあって神事の実務に当たる職をさすことが多い。祝(はふ)り子。「はうり」「はぶり」とも。 (学研)

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 この歌ならびに歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その46改)」で紹介している。

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■芝運動公園万葉歌碑(巻一 一八)■

  

芝運動公園万葉歌碑(額田王

 この歌ならびに歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その47改)」で紹介している。

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奈良県桜井市三輪 三輪山平等寺万葉歌碑(巻七 一〇九四)■

奈良県桜井市三輪 三輪山平等寺万葉歌碑(柿本人麻呂歌集)


 この歌ならびに歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その77改)」で紹介している。

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奈良県桜井市金屋 志貴御県坐神社(磯城瑞籬宮址)万葉歌碑(巻十三 三二四九)■

奈良県桜井市金屋 志貴御県坐神社(磯城瑞籬宮址)万葉歌碑(作者未詳)

(一社)桜井市観光協会HPに「志貴御県坐(しきのみあがたいます)神社は、三輪山の西南麓に南面する旧村社で、大和国に置かれた六御県(高市・葛木・十市・志貴・山辺・曽布)の一つです。御県坐神社とは、朝廷に献上する為の野菜を栽培する、神聖な菜園の霊を神として祀る神社といわれています。

 主祭神大己貴命(おおなむちのみこと)、あるいは志貴連の祖神である天津饒速日命(あまつにぎはやひのみこと)など諸説があります。当社の初見は、天平2年(730)の大倭国正税帳の『志貴御県神戸・・・』であり、遅くとも8世紀初頭には存在していたと思われます。

 境内の一角には『崇神天皇磯城瑞籬宮趾』(すじんてんのう しきみずがきのみやあと)の石碑が建っています。当地を磯城瑞籬宮趾とするのは、江戸中期の史書である大和志(1736年)に、『三輪村東南志紀御県神社西に在り』と記されていることにありますが、その根拠は不明です。いずれにせよ、このあたりは奈良盆地を見渡す場所に位置する交通の要所であり、古代大和王権、発展の拠点ともなった地域といえるでしょう。」と書かれている。



 この歌ならびに歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その78改)」で紹介している。

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奈良県桜井市金屋 海拓榴市観音入口万葉歌碑(巻十二 三一〇一)■

奈良県桜井市金屋 海拓榴市観音入口万葉歌碑(作者未詳)

●歌をみていこう。

 

◆紫者 灰指物曽 海石榴市之 八十衢尓 相兒哉誰

       (作者未詳 巻十二 三一〇一)

 

≪書き下し≫紫(むらさき)は灰(はい)さすものぞ海石榴市(つばきち)の八十(

 

やそ)の衢(ちまた)に逢(あ)へる子や誰(た)れ

 

(訳)紫染めには椿の灰を加えるもの。その海石榴市の八十の衢(ちまた)で出逢った子、あなたはいったいどこの誰ですか。(伊藤 博著「万葉集 三」角川ソフィア文庫より)

(注)上二句は懸詞の序。「海石榴市」を起す。紫染には媒染剤に椿の灰を使う。(伊藤脚注)

(注)逢へる子や誰れ:歌垣での、男の女への求婚。(伊藤脚注)

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 この歌ならびに歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その59改)で紹介している。

 三一〇一、三一〇二歌は問答歌になっており、三一〇二歌も紹介している。

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奈良県桜井市金屋 佛教傳承之地の碑隣万葉歌碑(巻十 二二二二)

奈良県桜井市金屋 佛教傳承之地の碑隣万葉歌碑(作者未詳)



「仏教伝来之地」の碑

 桜井市HPに「はじまりの街桜井物語」がある。それによると、①万葉集の巻頭の歌が詠まれた地、②相撲発祥の地、③芸能発祥の地、④仏教伝来の地とある。

 巻十 二二二二歌ならびに、この四つのはじまりの地については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その79改)」で紹介している。

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(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★(一社)桜井市観光協会HP