万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その141)―奈良県高市郡明日香村 犬養万葉記念館―万葉集 巻二 一五八

●歌は「山吹の立ちよそひたる山清水汲みに行かめど道の知らなくに」である・。

 

●この歌碑は、奈良県高市郡明日香村 犬養万葉記念館にある。

  

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犬養万葉記念館万葉歌碑(高市皇子

●歌をみてみよう。

 

◆山振之 立儀足 山清水 酌尓雖行 道之白鳴

                   (高市皇子 巻二 一五八)

 

≪書き下し≫山吹(やまぶき)の立ちよそひたる山清水汲みに行かめど道の知らなくに

 

(訳)黄色い山吹が咲き匂っている山の清水、その清水を汲みに行きたいと思うけれど、どう行ってよいのか道がわからない。(伊藤 博著「万葉集 一」角川ソフィア文庫より)

(注)「山吹」に「黄」を、「山清水」に「泉」を匂わす。

 

題詞「十市皇女薨時高市皇子尊御作歌三首」<十市皇女(といちのひめみこ)の薨(こう)ぜし時に、高市皇子尊(たけちのみこのみこと)の作らす歌三首>とあり、そのうちの一首である。

 この歌に関しては、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その74改)」で紹介している。(初期のブログであるのでタイトル写真には朝食の写真が掲載されていますが、「改」では、朝食の写真ならびに関連記事を削除し、一部改訂いたしております。ご容赦ください)

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tom101010.hatenablog.com

 

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犬養万葉記念館

 今日(6月30日)から、明日香村めぐりである。

 橿原市の万葉歌碑32か所(橿原の万葉歌碑めぐり―万葉人の心、千年を越えて 日本最初の歌集・万葉集)<橿原市観光政策課、橿原市観光協会発行のパンフレット>に記載された歌碑数32)のラスト3か所を巡り終え、いよいよ明日香村である。

 まず最初に、犬養万葉記念館を選んだ。万葉集と言えば、犬養 孝氏である。ネットで検索しいろいろ調べてみたが、この記念館を訪れずして明日香万葉を語れようかである。

 車を駐車場に止め、お邪魔する。催し物があるのか数人の方が準備に追われている様子であった。しかし、ご親切にも、その手を止められ、「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」というパンフレットを持ってきていただく。このマップには、万葉歌碑1~32(犬養孝揮毫碑15を含む)の所在地が地図上に標されている。裏面の「明日香村にある犬養孝揮毫の15の万葉歌碑ならびに三つの関連碑」には、同氏揮毫の15の歌碑の所在地、歌、万葉集収録巻ならびに番号、作者、訳などが記載されている。歌碑めぐりのバイブルである。

 廊下には万葉時代の女性の服装が飾ってあり、当時の服装について説明していただく。高松塚の壁画の女性の服装を再現したような感じである。凛とした感じでこれが万葉びとの服装なのかと息をのむ。

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万葉時代の女性の服装(犬養万葉記念館)

 館内には、万葉集に関連する資料や、犬養孝氏の遺品、数々の図書などが展示されていた。

 新元号「令和」について犬養孝氏所蔵の「西本願寺本萬葉集 巻五」が展示されており梅花宴三二首の序詞が見れるようになっている。

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元号「令和」に関する梅花宴三二首の序詞(西本願寺本萬葉集

 旧南都銀行明日香支店の店舗蔵造の外観を残して記念館として再構築されたそうである。

 門を入ってすぐ、館への入り口の横にオープンカフェがあるが、その間の小庭に歌碑がある。

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犬養万葉記念館中庭

記念館前の道路際には「万葉は青春のいのち」の碑もある。

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「万葉は青春のいのち」の碑(犬養万葉記念館前)

 明日香村万葉歌碑めぐりスタートにもってこいのシチュエーションであった。

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」

★「橿原の万葉歌碑めぐり」 (橿原市観光政策課)

 

 

20210924朝食関連記事削除、一部改訂