万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その143)―奈良県高市郡明日香村 飛鳥坐神社境内―

●歌は、「みもろは人の守る山もとへはあしひ花さきすゑへは椿花さくうらくはし山そ泣く子守る山」である。

 

●歌碑は、奈良県高市郡明日香村 飛鳥坐神社(あすかにいますじんじゃ)にある。

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飛鳥坐神社参道階段横万葉歌碑(作者未詳)

 同神社では、毎年2月第1日曜日に五穀豊穣と子孫繁栄を祈願する「おんだ祭(御田植神事)」が開かれることでも有名である。

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飛鳥坐神社神社銘碑と灯篭

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飛鳥坐神社鳥居と参道

 ここを訪れた6月30日は、毎年この日に全国で行われる「夏越の祓(なごしのはらえ)」茅の輪くぐりが参道階段入口に設けてあった。

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茅の輪くぐり

 参道階段の上る途中右手にこの歌碑があった。

 

●歌をみてみよう。

◆三諸者 人之守山 本邊者 馬酔木花開 末邊方 椿花開 浦妙山曽 泣兒守山

(作者未詳 巻十三 三二二二)

 

≪書き下し≫みもろは 人の守る山 本辺(もとへ)は 馬酔木(あしび)花咲く 末辺(すゑへ)は 椿花咲く うらぐはし 山ぞ 泣く子守る山 

 

(訳)みもろの山は、人がたいせつに守っている山だ。麓(ふもと)のあたりには、一面に馬酔木の花が咲き、頂のあたりには、一面に椿の花が咲く。まことにあらたかな山だ。泣く子さながらに人がいたわり守、この山は。(伊藤 博 著 「万葉集 三」 角川ソフィア文庫より)

(注)みもろ 【御諸・三諸・御室】:名詞 神が降臨して宿る神聖な所。磐座(いわくら)(=神の御座所)のある山や、森・岩窟(がんくつ)など。特に、「三輪山(みわやま)」にいうこともある。また、神座や神社。「みむろ」とも。

(注)もとへ【本方・本辺】:名詞 ①もとの方。根元のあたり。②山のふもとのあたり。

(注)すゑへ【末方・末辺】:名詞 ①末の方。先端。②山の頂のあたり。◆上代語。

(注)うらぐはし 【うら細し・うら麗し】:形容詞 心にしみて美しい。見ていて気持ちがよい。すばらしく美しい。

 

 

 神社全体が森に包まれた様相で、静寂さ、荘厳さをもつ「みもろの山」の雰囲気そのものである。

 

 この歌が収録されてる巻十三についてみてみよう。万葉集目録によると、次のようになっている。

 雑歌  二十七首

 相聞歌 五十七首

 問答歌  十八首

 譬喩歌   一首

 挽歌  二十四首

 

 神野志隆光氏は、その著「万葉集をどう読むか―歌の『発見』と漢字世界」の中で次のように書かれている。「巻十三は、長歌集です。短歌、旋頭歌もふくまれていますが、それらはすべて反歌としてあります。長歌は六六首、うち反歌をもたないもの一九首、反歌としての短歌六〇首、旋頭歌一首、あわせて一二七首がこの巻におさめられます。長歌集として一巻をなすのはこの巻だけです。しかも、雑歌、相聞歌、問答歌、譬喩歌、挽歌という部立てをもちます。基本的な部立てを完備するのです。」

 このことは、長歌が短歌同様に、ありうることを示し、長歌+短歌という形態的な歌のありかたの可能性を示しているのである。歌のひろがり、多様性を追求している万葉集万葉集たる所以が見られるのである。

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集をどう読むか―歌の『発見』と漢字世界」 神野志隆光 著 

                         (東京大学出版会

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「犬養孝揮毫万葉歌碑マップ(明日香村)」

 

●本日のザ・サンドイッチモーニング&フルーツフルデザート

 サンドイッチは、サニーレタスとミニトマトと焼き豚である。デザートは、りんごの飾り切りを半分に切り、背合わせにしてみた。りんご舟の感じである。トンプソンとクリムゾンシードレスの切合わせで波を表した。

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7月23日のザ・モーニングセット

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7月23日のフルーツフルデザート