万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その238改,239改,240改)―大津京シンボル緑地、びわ湖大津館湖畔―万葉集 巻三 二六六、巻四 四八八

◎万葉歌碑を訪ねて(その238)

 

●歌は、「近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのにいにしへ思ほゆ」である。

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大津京シンボル緑地万葉歌碑(柿本人麻呂

●歌碑は、大津市錦織 大津京シンボル緑地にある。

 この歌については、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その236)で紹介しているのでここでは割愛する。

 

◎万葉歌碑を訪ねて(その239)

 

歌は、「君待つと我が恋ひ居れば我がやどの簾動かし秋の風吹く」である。

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大津京シンボル緑地万葉歌碑(額田王

歌碑は、大津市錦織 大津京シンボル緑地    にある。

 

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大津市錦織 大津京シンボル緑地の万葉歌碑等

歌をみていこう。

◆君待登 吾戀居者 我屋戸之 簾動之 秋風吹

              (額田王 巻四 四八八)

 

≪書き下し≫君待つと我(あ)が恋ひ居(を)れば我(わ)がやどの簾(すだれ)動かし秋の風吹く

 

(訳)あの方のおいでを待って恋い焦がれていると、折しも家の戸口のすだれをさやさやと動かして秋の風が吹く。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)

 

題詞は、「額田王思近江天皇作歌一首」<額田王(ぬかたのおほきみ)近江天皇(あふみのすめらみこと)を思(しの)ひて作る歌一首>である。

 

四八九歌には、額田王の姉といわれる鏡王女の歌が収録されている。こちらもみておこう。

 

◆風乎太尓 戀流波乏之 風小谷 将来登時待者 何香将嘆

               (鏡王女 巻四 四八九)

 

≪書き下し≫風をだに恋ふるは羨(とも)し風をだに来(こ)むとし待たば何(なに)か嘆かむ

 

(訳)ああ秋の風、その風の音にさえ恋心がゆさぶられるとは羨(うらや)ましいこと。風にさえ胸ときめかして、もしやおいでにかと待つことができるなら、何を嘆くことがありましょう。(同上)

 

題詞は、「鏡王女作歌一首」<鏡王女(かがみのおほきみ)が作る歌一首>である。

 

額田王の歌に和した歌である。

なお、額田王の四八八歌と、鏡王女の四八九歌は、共に巻八の部立て「秋相聞」のトップ歌として、一六〇六歌、一六〇七歌に重複収録されている。

 

◆君待登 吾戀居者 我屋戸之 簾動之 秋風吹      (巻四  四八八)

 君待跡 吾戀居者 我屋戸乃 簾令動 秋之風吹     (巻八 一六〇六)

 

◆風乎太尓 戀流波乏之 風小谷 将来登時待者 何香将嘆 (巻四  四八九)

 風乎谷  戀者乏   風乎谷 将来常思待者 何如将嘆 (巻八 一六〇七)

 

伊藤 博氏は、「万葉集 二」(角川ソフィア文庫)の一六〇六歌の脚注に、「次歌と共に四八八、四八九に重出。承知の上で、「秋相聞」の代表作として古歌群(一六〇六~一六〇九)の冒頭に置かれたものか。春夏秋冬の「雑歌」の冒頭には必ず古歌群が捉えられているが、「相聞」では秋に限られる。」と書かれている。

 

 

◎万葉歌碑を訪ねて(その240)

 

●歌は、「近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのにいにしへ思ほゆ」である。

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びわ湖大津館近くの湖畔の万葉歌碑(柿本人麻呂

●歌碑は、大津市柳が崎 びわ湖大津館の湖畔にある。

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万葉歌碑とびわ湖畔

 大津館については、同館HPに次のように書かれている。「県内初の国際観光ホテルとして昭和9年に建設された当時の姿をそのままに復元改修した「びわ湖大津館」。クラシカルモダンなかつての雰囲気がただよう館内と、移ろう 季節の中で、咲く花々たちのナチュラルな美しさを楽しむ 「イングリッシュガーデン」でおくつろぎください。」

 

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びわ湖大津館正面側

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びわ湖大津館湖畔側

「万葉歌碑を訪ねて(その238)」と同じであるので、歌碑の写真の紹介に留める。

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「びわ湖大津 光くんマップ(大津市観光地図)」(大津市・(公社)びわ湖大津観光協会

★「大津市ガイドマップ」(㈱ゼンリン 協力:大津市

 

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