万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2384)―

あじさい■

 

「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ケ浦市郷土博物館発行)より引用させていただきました。

●歌は、「あぢさゐの八重咲くごとく八つ代にをいませ我が背子見つつ偲はむ」である。

千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(橘諸兄) 20230926 撮影

●歌碑(プレート)は、千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園にある。

 

●歌をみていこう。

 

四四四六から四四四八歌の歌群の題詞は、「同月十一日左大臣橘卿宴右大辨丹比國人真人之宅三首」<同じ月の十一日に、左大臣橘卿(たちばなのまへつきみ)、右大弁(うだいべん)丹比國人真人(たぢひのくにひとのまひと)が宅(いへ)にして宴(うたげ)する歌三首>である。

 

◆安治佐為能 夜敝佐久其等久 夜都与尓乎 伊麻世和我勢故 美都ゝ思努波牟

       (橘諸兄 巻二十 四四四八)

 

≪書き下し≫あぢさいの八重(やへ)咲くごとく八(や)つ代(よ)にをいませ我が背子(せこ)見つつ偲ばむ

 

(訳)あじさいが次々と色どりを変えてま新しく咲くように、幾年月ののちまでもお元気でいらっしゃい、あなた。あじさいをみるたびにあなたをお偲びしましょう。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)八重(やへ)咲く:次々と色どりを変えてま新しそうに咲くように。あじさいは色の変わるごとに新しい花が咲くような印象をあたえる。(伊藤脚注)

(注)八(や)つ代(よ):幾久しく。上の「八重」を承けて「八つ代」といったもの。(伊藤脚注)

(注)います【坐す・在す】[一]自動詞:①いらっしゃる。おいでになる。▽「あり」の尊敬語。②おでかけになる。おいでになる。▽「行く」「来(く)」の尊敬語。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

 左注は、「右一首左大臣寄味狭藍花詠也」≪右の一首は、左大臣、味狭藍(あじさゐ)の花に寄せて詠(よ)む。>である。

 

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感想(1件)

 この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その982)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 四四四六から四四四八の歌群については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その467)」で、もう一首の「あぢさい」の家持の歌とともに紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

題詞にある丹比國人真人は、橘奈良麻呂の変に連座遠江守であったが、伊豆国に配流されている。

丹比國人真人の歌は四首収録されている。これらについては、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1170)」で紹介している。

➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

 

 毎年、東京のM大学で特別講義の機会をいただいている。コロナ渦にあって、しばらくオンライン講義であったが、今回は久しぶりに対面授業となった。

 11月18日(土)の午後である。

 折角の箱根越えのチャンスである。

 かねてから是非行ってみたいと考えていたのは、日本で一番古いとされる前玉神社の万葉歌碑、歌碑といっても石灯籠に刻されているのであるが、それと玉川碑である。

 計画をたてた。

18日の午前中に、府中市郷土の森公園・調布市多摩川児童公園・狛江市中和泉「玉川碑」を、19日(日)は、前玉神社・八幡山古墳・川越氷川神社を巡る予定である。

 

 小生は、晴男であるが、何と今回は、出発時に激しい雷雨に見舞われたのである。始発電車に間に合わせるには歩いていかなければならない。やむなく最寄り駅まで、釣り用の防水ズボンをはき、荷物には45リッター用のポリ袋をかぶせ駅まで 歩く。先が思いやられる。

 

 講義用のレジメをチェックしていたが、ウトウトしてしまい、新横浜で慌てて下りる。嘘みたいに晴れ渡っている。ラッキー!

 新横浜駅からの乗り換えに手間取る。こんなにも離れているなんて!

 ようやく、分倍河原駅に。

 歩いて20分。到着。しかしどこへ行けばいいのか。案内標識をみて「郷土の森公園管理事務所」まで行く。

 そこで、歌碑の場所を訪ねると郷土の森公園には「ない」との返事が。携帯を取り出し見てもらうと「郷土の森博物館」の方であるとの返事。

 結局元のところまで戻る羽目に。郷土の森正門で係の人に場所でパンフレットをいただき場所の説明を受けた。

 通常、入園料が必要であるが、農業祭で無料であった。あーこのロスタイム。

 現地で発見、「郷土の森正門前」というバス停があることを。

 何やかやで、予定を大幅に変更せざるをえない。講義に絶対遅刻はできない。結局ここの歌碑一基で予定終了。


 講義も無事に終わり、桶川駅近くのホテルに辿り着く。

 ホテルで作戦変更作業に。

 前玉神社→八幡山古墳は、徒歩で40分。バスで吹上駅から前玉神社に行きバスで戻り、吹上駅から行田折り返し場までバスで行きまた折り返すことに。

 変更はしたもののなにか物足りない。

 吹上駅でタクシーを捕まえることができたら効率よくひょっとしたら川越氷川神社をあきらめれば調布市多摩川児童公園・狛江市中和泉「玉川碑」を見ることができる。

さらに調べて行くと狛江駅の「万葉をしのぶ乙女像『たまがわ』」(狛江市役所HP)の横に「巻14―3373歌」の説明案内板があると分かったので、これも追加できる。リベンジで来るのである。

 ホテルの朝食は6時30分からであるが、これもあきらめ6時過ぎにホテルをあとにする。

 吹上駅、何と一台のタクシーが待機している。

 前玉神社、八幡山古墳の歌碑を撮影、その後も順調に狛江駅の「万葉をしのぶ乙女像『たまがわ』」、狛江市中和泉「玉川碑」、調布市多摩川児童公園の碑を見て周ることができたのである。

 

 

■前玉神社石灯籠■

 

行田市藤原町古墳公園■



狛江駅の「万葉をしのぶ乙女像『たまがわ』」■



■狛江市中和泉「玉川碑」■


調布市多摩川児童公園■



 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「狛江市役所HP」