万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その1400)―福井県越前市 万葉ロマンの道(19)―万葉集 巻十五 三七六九

●歌は、「ぬばたまの夜見し君を明くる朝逢はずまにして今ぞ悔しき」である。

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福井県越前市 万葉ロマンの道(19)万葉歌碑(狭野弟上娘子)

●歌碑は、福井県越前市 万葉ロマンの道(19)にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆奴婆多麻乃 欲流見之君乎 安久流安之多 安波受麻尓之弖 伊麻曽久夜思吉

       (狭野弟上娘子 巻十五 三七六九)

 

≪書き下し≫ぬばたまの夜(よる)見し君を明くる朝(あした)逢はずまにして今ぞ悔(くや)しき

 

(訳)思えば、夜には相見た君であったのに、明けた朝にはお逢いしないままにしてしまったりして、今となっては悔しくてなりません。(「万葉集 三」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

(注)ぬばたまの【射干玉の・野干玉の】分類枕詞:①「ぬばたま」の実が黒いところから、「黒し」「黒髪」など黒いものにかかり、さらに、「黒」の連想から「髪」「夜(よ)・(よる)」などにかかる。②「夜」の連想から「月」「夢」にかかる。 ※「うばたまの」「むばたまの」とも。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

 改めて「枕詞」について考えてみよう。

 枕詞は、今から半世紀以上も前、こういうと年がばれてしまいますが、中学校の授業で、「ぬばたまの」は黒、「あしひきの」は山に懸る言葉で、それ自体に意味はないと教えられた。最近、万葉歌碑巡りをし、万葉集の歌に接する機会が増えるにつれ、えっ、これも枕詞?と枕詞の数の多さに驚かされることが多くなってきた。

 

 そこで頭を整理するために「枕詞」について検索してみた。「コトバンク 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)」に詳しく、枕詞の歴史や分類について次の様に書かれているので、長いが引用させていただきます。

 「枕詞(まくらことば):主として和歌に用いられる修飾句。通常は一句五音で、一首の主想表現と直接の意味的関連がなく、被修飾語(被枕詞)だけを修飾する。被修飾語へのかかり方は慣習的、固定的で、一定の枕詞が一定の語にかかるのを普通とするが、類似の語に拡大してかかる場合もある。古くは和歌に限らず、諺(ことわざ)や神託などにおいて、神名、人名、地名にかかる例があり、それがもっとも原初的なものと思われ、本来被枕詞を呪的(じゅてき)にほめたたえる詞であったらしい。それが徐々に呪性を失い、意味もわからなくなってゆくにつれて、二義的に解釈され単なる修飾句や声調を整えるための修辞となったのであろう。万葉時代はほぼ二義的段階のもので、平安時代以後はいちだんと形式化してゆき、種類も少なくなる。

 その分類は、(1)枕詞と被枕詞との接続関係によるもの、(2)被枕詞の性質によるもの、(3)枕詞の性質によるもの、とする3種が考えられているが、(1)が一般的である。(1)はさらに〔1〕形容、比喩(ひゆ)、説明など意義に関するもの―「葦(あし)が散る 難波(なにわ)」「沖つ鳥 鴨(かも)」など、〔2〕懸詞、同音反復など、音に関するもの―「玉櫛笥(たまくしげ) 二上山(ふたかみやま)」「ちちのみの 父」などに分ける。(2)は被枕詞を、〔1〕固有名詞―「そらみつ 大和(やまと)」、〔2〕普通名詞―「あしひきの 山」、〔3〕用言―「咲く花の うつろふ」、などに分けてみて、枕詞の修飾機能や時代を重視する分類である。(3)は枕詞の素材がいかなる性質のものかによる分類である。(1)~(3)を相互に関連させつつ、その起源、本質などが考えられている。[橋本達雄]」

 

 さらに、「おもな枕詞とかかり方」が解説されている。こちらも引用させていただきます。ただし、例歌は割愛させていただきました。

あしひきの:山・峯(を)(語義、かかり方未詳)

 あづさゆみ:音・末・周淮(すゑ)(地名)・引く・春、など(梓(あずさ)の弓のもつ属性による。春は弓を張るところから同音に転じたかかり方)

 あらたまの:年・月・来経(きへ)(語義、かかり方未詳。荒玉の鋭(と)しと続く意か)

 あをによし:奈良、例外として国内(くぬち)(語義、かかり方未詳。奈良から青土(あおに)を産したとも)

 いさなとり:海・浜・灘(なだ)(勇魚(いさな)=鯨をとる海と続いてかかる。他はその転用)

 いはばしる:淡海(あふみ)(国名)・滝・垂水(たるみ)・神南備(かむなび)山(岩に水が激し、飛沫(ひまつ)〈泡〉をあげる意でかかるか。神南備山の場合は未詳)

 うちひさす:宮・都(日の射す宮、都を褒めたたえる意。「うち」は接頭語)

 うつせみの:命・仮(か)れる身・人・世(この世の人の意。転じて蝉(せみ)の抜け殻の意となる)

おしてる(や):難波(なには)(日光が一面に照る意でたたえる意か。詳しくは不明)

 おほふねの:渡(わたり)の山・香取(かとり)(ともに地名)・津守・たのむ・ゆた・たゆたふ・ゆくらゆくら、など(大船から受ける多様な連想から)

 かむかぜの:伊勢(いせ)(神風の息吹の意か)

 くさまくら:旅、例外として多胡(たこ)(地名)(旅で草を結んで枕(まくら)にするところからかかる)

 こもりくの:初瀬(はつせ)(山に囲まれた所の意)

しきたへの:枕(まくら)・床・衣・袖(そで)・袂(たもと)・手枕(たまくら)・家・黒髪(敷物の布あるいは織り目の細かい布の意で、広く寝具および関連する語にかかる)

 しろたへの:衣・衣手・下衣(したごろも)・袖(そで)・たすき・紐(ひも)・帯・枕(まくら)、など(白い布の意から広くかかる)

 そら(に)みつ:大和(やまと)(語義、かかり方未詳)

 たまかぎる:ほのか・はろか・ただ一目・夕(ゆふ)へ・日・岩垣淵(いはがきふち)(玉が微妙な光を発して輝く意から、連想される種々の語にかかる)

 たまかづら:花・実・絶えず・遠長(とほなが)く・影・懸(か)く・さきく(たまは美称。かづらはつる性植物。髪飾り〈かげ〉にし頭に懸けるなどする)

 たまきはる:内・宇智(うち)(地名)・命・幾代(いくよ)・吾(わ)(語義、かかり方未詳)

 たまくしげ:明く・開く・覆ふ・二上(ふたがみ)山・三諸(みもろ)・蘆城(あしき)(以上三つは地名)・奥に思ふ(たまは美称。櫛笥(くしげ)は化粧道具を入れる箱。箱の開閉や蓋(ふた)や身(み)のあるところから種々の語にかかる)

 たまだすき:畝傍(うねび)(地名)・懸く(たまは美称。襷(たすき)をうなじに懸ける意から続ける)

 たまづさの:使(つかひ)・妹(いも)(たまは美称。使いや、妹の使いは梓(あずさ)の杖(つえ)を持つ習慣があったという)

 たまのをの:絶ゆ・乱る・継ぐ・くくり寄す・間(ま)も置かず・長し・現(うつ)し心・惜し(玉を貫く緒の意から、緒に関連する語にかかる)

 たまほこの:道・里(陽石の意で、道や里の入口に邪悪なものの侵入を防ぐために立てるのでかかるとする説がある)

 たらちねの:母(満ち足りる意の足らしの転と、女性の尊称「ね」の複合したものか)

 ちはやぶる:神・宇治(神の荒魂(あらたま)が猛威を振るう意でかかる。宇治への続きは未詳)

 つゆしもの:秋・置く・消(け)・過ぐ(露や霜の性格に関連する語にかかる)

 とぶとりの:明日香(あすか)・早く来(く)(飛ぶ鳥のように早く来と続く。明日香の場合は不明)

 とりがなく:あづま(東国)(東国人のことばが鳥の鳴くように聞こえたのでいうか)

 ぬばたまの:黒・髪・夜・宵・夕(ゆふ)へ・月・夢・妹(いも)、など(ぬばたまはヒオウギの実か。黒いので、黒や暗い夜の概念内の諸語にかかる)

 ひさかたの:天(あめ)・雨・月・都(語義、かかり方未詳。天にかかるのが本来的用法)

 まそかがみ:見る・目・懸く・磨(と)ぐ・床の辺(へ)去らず・照る・清し、など(鏡の美称で、鏡の属性と関連する語に広くかかる)

 もののふ:宇治・八十(やそ)・石瀬(いはせ)(地名)(文武百官の意で氏(うじ)の多いところから。八十へ、石瀬も五十(いそ)に言いかけたものらしい)

 ももしきの:大宮(多くの石や木で築いたの意であろう)

 やすみしし:我が大君(天皇を賛美した語)

 わかくさの:つま(夫・妻)・思ひつく・新手枕(にひたまくら)・脚結(あゆひ)(若草のみずみずしく魅力的なところからかかる。脚結の場合は未詳)

 [橋本達雄]」

 

 枕詞を多用したのは柿本人麻呂である。例えば、一九六歌をみてみよう。下記の太文字部が枕詞である。

 

飛鳥 明日香乃河之 上瀬 石橋渡(一云、石浪) 下瀬 打橋渡 石橋(一云、石浪) 生靡留 玉藻毛叙 絶者生流 打橋 生乎為礼流 川藻毛叙 干者波由流 何然毛 吾王生乃 立者 玉藻之如許呂 臥者 川藻之如久 靡相之 宣君之 朝宮乎 忘賜哉 夕宮乎 背賜哉 宇都曽臣跡 念之時 春部者 花折挿頭 秋立者 黄葉挿頭 敷妙之 袖携 鏡成 唯見不献 三五月之 益目頬染 所念之 君与時ゞ 幸而 遊賜之 御食向 木瓲之宮乎 常宮跡定賜 味澤相 目辞毛絶奴 然有鴨(一云、所己乎之毛) 綾尓憐 宿兄鳥之 片戀嬬(一云、為乍) 朝鳥(一云、朝霧) 往来為君之 夏草乃 念之萎而 夕星之 彼往此去 大船 猶預不定見者 遺問流 情毛不在 其故 為便知之也 音耳母 名耳毛不絶 天地之 弥遠長久 思将往 御名尓懸世流 明日香河 及万代 早布屋師 吾王乃 形見何此為

                   (柿本人麻呂 巻二 一九六)

 

≪書き下し≫飛ぶ鳥 明日香の川の 上(かみ)つ瀬に 石橋(いしばし)渡す<一には「石並」といふ> 下(しも)つ瀬に 打橋(うちはし)渡す 石橋に<一には「石並」といふ> 生(お)ひ靡(なび)ける 玉藻ぞ 絶ゆれば生(は)ふる 打橋に 生ひををれる 川藻もぞ 枯るれば生ゆる なにしかも 我が大君の 立たせば 玉藻のもころ 臥(こ)やせば 川藻のごとく 靡かひし 宜しき君が 朝宮を 忘れたまふや 夕宮を 背(そむ)きたまふや うつそみと 思ひし時に 春へは 花折りかざし 秋立てば 黄葉(もみぢば)かざし 敷栲(しきたへ)の 袖たづさはり 鏡なす 見れども飽かず 望月(もちづき)の いや愛(め)づらしみ 思ほしし 君と時時(ときとき) 出でまして 遊びたまひし 御食(みけ)向かふ 城上(きのへ)の宮を 常宮(とこみや)と 定めたまひて あぢさはふ 目言(めこと)も絶えぬ しかれかも<一には「そこをしも」といふ> あやに悲しみ ぬえ鳥(どり)の 片恋(かたこひ)づま(一には「しつつ」といふ) 朝鳥(あさとり)の<一つには「朝霧の」といふ> 通(かよ)はす君が 夏草の 思ひ萎(しな)えて 夕星(ゆふつづ)の か行きかく行き 大船(おほふな)の たゆたふ見れば 慰(なぐさ)もる 心もあらず そこ故(ゆゑ)に 為(せ)むすべ知れや 音(おと)のみも 名のみも絶えず 天地(あめつち)の いや遠長(とほなが)く 偲ひ行かむ 御名(みな)に懸(か)かせる 明日香川 万代(よろづよ)までに はしきやし 我が大君の 形見(かたみ)にここを

 

(訳)飛ぶ鳥明日香の川の、川上の浅瀬に飛石を並べる(石並を並べる)、川下の浅瀬に板橋を掛ける。その飛石に(石並に)生(お)い靡いている玉藻はちぎれるとすぐまた生える。その板橋の下に生い茂っている川藻は枯れるとすぐまた生える。それなのにどうして、わが皇女(ひめみこ)は、起きていられる時にはこの玉藻のように、寝(やす)んでいられる時にはこの川藻のように、いつも親しく睦(むつ)みあわれた何不足なき夫(せ)の君の朝宮をお忘れになったのか、夕宮をお見捨てになったのか。いつまでもこの世のお方だとお見うけした時に、春には花を手折って髪に挿し、秋ともなると黄葉(もみぢ)を髪に挿してはそっと手を取り合い、いくら見ても見飽きずにいよいよいとしくお思いになったその夫の君と、四季折々にお出ましになって遊ばれた城上(きのえ)の宮なのに、その宮を、今は永久の御殿とお定めになって、じかに逢うことも言葉を交わすこともなされなくなってしまった。そのためであろうか(そのことを)むしょうに悲しんで片恋をなさる夫の君(片恋をなさりながら)朝鳥のように(朝霧のように)城上の殯宮に通われる夫の君が、夏草の萎(な)えるようにしょんぼりして、夕星のように行きつ戻りつ心落ち着かずにおられるのを見ると、私どももますます心晴れやらず、それゆえどうしてよいかなすすべを知らない。せめて、お噂(うわさ)だけ御名(みな)だけでも絶やすことなく、天地(あめつち)とともに遠く久しくお偲びしていこう。その御名にゆかりの明日香川をいついつまでも……、ああ、われらが皇女の形見としてこの明日香川を。(伊藤 博  著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)ををる【撓る】自動詞:(たくさんの花や葉で)枝がしなう。たわみ曲がる。 ※上代語。(学研)

(注)もころ【如・若】名詞:〔連体修飾語を受けて〕…のごとく。…のように。▽よく似た状態であることを表す。(学研)

(注)こやす【臥やす】自動詞:横におなりになる。▽多く、死者が横たわっていることについて、婉曲(えんきよく)にいったもの。「臥(こ)ゆ」の尊敬語。 ※上代語。(学研)

(注)宜しき君が 朝宮を:何不足のない夫の君の朝宮なのに、その宮を。(伊藤脚注)

(注)うつそみと 思ひし時に:いついつまでもこの世の人とお見受けしていた、ご在世の時。(伊藤脚注)

(注)はるべ【春方】名詞:春のころ。春。 ※古くは「はるへ」。(学研)

(注)「敷栲の」以下「鏡なす」「望月の」「御食向ふ」「あぢさはふ」「ぬえ鳥の」「朝鳥の」「夏草の」「夕星の」「大船の」と共に枕詞。(伊藤脚注)

(注)たづさふ 【携ふ】:手を取りあう。連れ立つ。連れ添う。(学研)

(注)目言(めこと):名詞 実際に目で見、口で話すこと。顔を合わせて語り合うこと。(学研)

(注)とこみや【常宮】名詞:永遠に変わることなく栄える宮殿。貴人の墓所の意でも用いる。「常(とこ)つ御門(みかど)」とも。(学研)

(注)ゆふつづ【長庚・夕星】名詞:夕方、西の空に見える金星。宵(よい)の明星(みようじよう)。 ※後に「ゆふづつ」。[反対語] 明星(あかほし)。(学研)

(注)天地の:天地と共に、の意。(伊藤脚注)

(注)たゆたふ【揺蕩ふ・猶予ふ】自動詞:①定まる所なく揺れ動く。②ためらう。(学研)ここでは①の意

(注)御名(みな)に懸(か)かせる 明日香川:その御名にゆかりの明日香川をいついつまでも。(伊藤脚注)

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その132改)で紹介している。(初期のブログであるのでタイトル写真には朝食の写真が掲載されていますが、「改」では、朝食の写真ならびに関連記事を削除し、一部改訂いたしております。ご容赦下さい。)

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

もう一首みてみよう。同様に太文字部が枕詞である。

八隅知之 吾大王 高照 日之皇子 神長柄 神佐備世須等 太敷為 京乎置而 隠口乃 泊瀬山者 真木立 荒山道乎 石根 禁樹押靡 坂鳥乃 朝越座而 玉限 夕去来者 三雪落 阿騎乃大野尓 旗須為寸 四能乎押靡 草枕 多日夜取世須 古昔念而

       (柿本人麻呂 巻一 四十五)

 

≪書き下し≫やすみしし 我(わ)が大君 高照らす 日の御子(みこ) 神ながら 神さびせすと 太(ふと)敷(し)かす 都を置きて こもくりの 泊瀬(はつせ)の山は 真木(まき)立つ 荒山道(あらやまみち)を 岩が根 禁樹(さへき)押しなべ 坂鳥(さかとり)の 朝越えまして 玉かぎる 夕(ゆふ)さりくれば み雪降る 安騎(あき)の大野(おほの)に 旗(はた)すすき 小竹(しの)を押しなべ 草枕 旅宿(たびやど)りせす いにしへ思ひて

 

(訳)あまねく天の下を支配せられるわれらが大君、天上高く照らしたまう日の神の皇子(みこ)は、神であられるままに神々しく振る舞われるとて、揺るぎなく治められている都さえもあとにして、隠り処(こもりく)の泊瀬の山は真木の茂り立つ荒々しい山道なのに、その山道を岩や遮(さえぎ)る木々を押し伏せて、朝方、坂鳥のように軽々とお越えになり、光かすかな夕方がやってくると、み雪降りしきる安騎の荒野(あらの)で、旗のように靡くすすきや小竹(しん)を押し伏せて、草を枕に旅寝をなさる。過ぎしいにしえのことを偲んで。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)

(注)やすみしし【八隅知し・安見知し】分類枕詞:国の隅々までお治めになっている意で、「わが大君」「わご大君」にかかる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)たかてらす【高照らす】分類枕詞:空高く照るの意で、「日」にかかる。(学研)

(注)ふとしく【太敷く】他動詞:居を定めてりっぱに統治する。(宮殿を)りっぱに造営する。(柱を)しっかり立てる。(学研)

(注)こもりくの【隠り口の】分類枕詞:大和の国の初瀬(はつせ)の地は、四方から山が迫っていて隠れているように見える場所であることから、地名の「初(=泊)瀬」にかかる。(学研)

(注)さへき【禁樹】名詞:通行の妨げになる木。(学研)

(注)さかどりの【坂鳥の】分類枕詞:朝早く、山坂を飛び越える鳥のようにということから「朝越ゆ」にかかる。(学研)

(注)たまかぎる【玉かぎる】分類枕詞:玉が淡い光を放つところから、「ほのか」「夕」「日」「はろか」などにかかる。また、「磐垣淵(いはかきふち)」にかかるが、かかり方未詳。(学研)

(注)はたすすき【旗薄】名詞:長く伸びた穂が風に吹かれて旗のようになびいているすすき。(学研)

(注)いにしへ:亡き父草壁皇子の阿騎野遊猟のこと。

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その370)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 枕詞についても機会があれば少しでも深く探求していきたいものである。これからの課題である。

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「コトバンク 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)」

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」