万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その1809)―愛媛県西予市 三滝公園万葉の道(21)―万葉集 巻一 五四

●歌は、「巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を」である。

愛媛県西予市 三滝公園万葉の道(21)万葉歌碑(坂門人足

●歌碑は、愛媛県西予市 三滝公園万葉の道(21)にある。

 

●歌をみていこう。

 

題詞は、「大寳元年辛丑秋九月太上天皇幸于紀伊國時歌」<大宝(だいほう)元年辛丑(かのとうし)の秋の九月に、太上天皇(おほきすめらみこと)、紀伊の国(きのくに)に幸(いでま)す時の歌>である。

(注)太上天皇:持統上皇

 

◆巨勢山乃 列ゝ椿 都良ゝゝ尓 見乍思奈 許湍乃春野乎

      (坂門人足 巻一 五四)

 

≪書き下し≫巨勢山(こせやま)のつらつら椿(つばき)つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を

 

(訳)巨勢山のつらつら椿、この椿の木をつらつら見ながら偲ぼうではないか。椿花咲く巨勢の春野の、そのありさまを。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)

(注)こせやま【巨勢山】:奈良県西部、御所(ごせ)市古瀬付近にある山。(コトバンク 小学館デジタル大辞泉

(注)つらつらつばき 【列列椿】名詞:数多く並んで咲いているつばき。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)しのぶ 【偲ぶ】:①めでる。賞美する。②思い出す。思い起こす。思い慕う。(学研)

 

 左注は「右一首坂門人足」<右の一首は坂門人足(さかとのひとたり)>である。

 

この歌については、巨勢寺の子院の一つ阿吽寺の歌碑と共に、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その441)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

■■■岐阜県万葉歌碑巡り■■■

 10月11日から全国旅行支援がはじまった。万葉歌碑巡りのような旅にはもってこいである。

 18、19日に岐阜県の万葉歌碑巡りを行なった。一人一泊につき宿泊料が5,000円支援され、地域クーポンが平日3,000円がもらえたのである。

 

■■10月18日■■

自宅→高山市丹生川町町方 丹生川文化ホール→同町根方地区 ほえ橋→飛騨市古川町 細江歌塚→可児市久々利 可児郷土歴史館・万葉の庭→同町 泳宮古蹟→安八郡神戸町 神戸町役場→同町 日比野五鳳記念碑

 

■■10月19日■■

ホテル→養老公園元正天皇行幸遺跡(1)(2)→養老神社→(滋賀県近江八幡市牧町 水茎の岡)→自宅

 

 

※個別の歌碑の紹介ならびに歌の解説は後日行う予定です。ご了承下さい。

 

■■10月18日■■(19日の分は次稿で)

■自宅→高山市丹生川町町方 丹生川文化ホール■

 家を3時に出発。300kmのドライブである。養老SAで仮眠をとったので、到着したのは9時前であった。ホール前の歌碑の裏には「巻七 一一七三歌」が丹生川村名の由来となったと書かれている。

 丹生川文化ホール前万葉歌碑(裏に丹生川村の由来が書かれている)

 

■丹生川文化ホール→同町根方地区 穂枝橋■

 事前に(一社)岐阜県観光連盟から頂いた資料・「丹生川ガイドマップ」などをベースにに、国道158号線からバス停「琴水苑口」近くを左折、小八賀川(こはちががわ)にかかる穂枝(ほえ)橋を渡る。橋の北西袂下に小さな祠がありその横に歌碑が建てられている。明治二十年に立てられたようである。

 万葉歌碑と「穂枝(ほえ)橋」



 

「琴淵の碑」の説明案内板

 

■同町根方地区 ほえ橋→飛騨市古川町 細江歌塚■

 丹生川町からは北西に国道472号線を約30分走る。JR杉崎駅近くの「杉崎交差点」のJR沿いに細江歌塚がある。歌塚の南東側の小川に流れ込む水量は、17日の雨の影響か、半端でない。まっ白に泡だったように流れ込み太江川に合流し、すぐ宮川に流れ込む。

 「細江の歌塚」には、従二位権中納言藤原基綱卿の歌「不るさとに乃こる心はこころにて みはなほひなのみをなけくかな」と参議正三位 藤原済継卿の歌「久もをわけにこりをいてしこころもや 於なしはちすのつゆの月かけ」の二首が刻されている。

 その横に万葉歌碑が建てられている。歌塚と万葉歌碑の関係については不明である。

 細江歌塚(右)と万葉歌碑(左)

 

飛騨市古川町 細江歌塚→可児市久々利 可児郷土歴史館・万葉の庭■

約2時間のドライブである。途中松ノ木峠PAで小休止。ここは、「「日本でいちばん空に近いPA」である。標高1085mである。

 郷土歴史館に到着。受付で歌碑の場所を尋ねると、わざわざ案内していただける。郷土歴史館の名碑のすぐ後ろに歌碑があったのである。このゾーンが「万葉の庭」と称されているそうである。館内に入らないということで、入館料はとられなかった。

 

この銘碑の後ろが万葉の庭でそこに歌碑が立てられている

 

 

可児市久々利 可児郷土歴史館・万葉の庭→同町 泳宮古蹟■

 郷土歴史館から歩いて数分の所に泳宮古蹟がある。ここは、景行天皇の仮宮であったと「日本書紀」に記されている。この地で八坂入彦の姫・入媛(いりひめ)を見初め、妃にしたと伝えられている。

 古蹟といいながら、「轇轕蔵(こうかつくら)」(山車を保管する蔵)や市指定天然記念物の「フウの木」など派手なものが目立つ公園である。その一角にまさにひっそりと玉垣にかこまれた宮跡があり、その中に歌碑が立てられていた。時代を感じさせる歌碑であり、なぜかその前に灯明台や神棚用の湯のみが置かれている。不思議な空間であった。

 

歴とした万葉歌碑であるが・・・

 

■同町 泳宮古蹟→安八郡神戸町 神戸町役場■

 神戸(ごうど)町役場玄関ロビーの壁に日比野五鳳の書による山上憶良の八〇二・八〇三歌が書かれている。

 ちょうど、マイナンバーカードの受付をしており椅子が並べられて何人かが順番待ちをしている。これも時の流れを反映しているのでそのまま撮影。

神戸町役場玄関ロビー壁書

 

安八郡神戸町 神戸町役場→同町 日比野五鳳記念碑■

役場の近くに立派な日比野五鳳記念美術館がある。役場から南、車で10分くらいの養老鉄道東赤坂駅」近くに「日比野五鳳記念碑」がある。五鳳の生家跡だそうである。

 

日比野五鳳の書になる巻一 四八歌が刻されている

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「コトバンク 小学館デジタル大辞泉

★「丹生川ガイドマップ」 (飛騨乗鞍観光協会

★「可児市観光ガイドまっぷ」 (可児市観光交流課・可児市観光協会

★「ばらのまち 神戸 GODO」 (神戸町役場総務部まちづくり戦略課)

★「三滝自然公園 万葉の道」 (せいよ城川観光協会