万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その2211)―奈良市高畑町 瑜伽神社―万葉集 巻六 九九二

●歌は、「故郷の明日香はあれどあをによし奈良の明日香を見らくよしも」である。

奈良市高畑町 瑜伽神社万葉歌碑(大伴坂上郎女) 20230430撮影

●歌碑は、奈良市高畑町 瑜伽神社にある。

 

●歌をみていこう。

 

 題詞は、「大伴坂上郎女元興寺之里歌一首」<大伴坂上郎女元興寺(ぐわんごうじ)の里を詠む歌一首>である。

(注)元興寺:奈良遷都後、明日香の法興寺を奈良に建て替えたもの。飛鳥寺とも呼んだ。(伊藤脚注)

 

◆古郷之 飛鳥者雖有 青丹吉 平城之明日香乎 見楽思好裳

      (大伴坂上郎女 巻六 九九二)

 

≪書き下し≫故郷(ふるさと)の明日香(あすか)はあれどあをによし奈良の明日香を見らくしよしも

 

(訳)古京の明日香は明日香としてよい所ではあるが、新京奈良の明日香、この里を見るのはさらにいっそうすばらしい。(伊藤 博 著「万葉集 二」 角川ソフィア文庫

(注)明日香はあれど:明日香は明日香としてあって、それはそれでよいが。「あれど」は下句の内容を引き立てる用法。(伊藤脚注)

 

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 この歌ならびに歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その40改)」で、奈良市芝新屋町元興寺塔跡の歌碑とともに紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

瑜伽神社(ゆうがじんじゃ)は、奈良ホテルの東側にあり、国道169号線を少し入った小径をしばらく行き左折すると一の鳥居がある。

結構な参道石段を登りつめると美しい社殿がある。天気が良ければ大和三山も見えるそうである。古の飛鳥京にその佇まいが似ていることから「平城(なら)の飛鳥」ともいわれている。


社殿の東側に「飛鳥の御井」と並んで大伴坂上郎女の万葉歌碑がある。

(注)ゆが【瑜伽】〘名〙 (yoga の音訳、「相応」と訳す) 仏語。呼吸を調えるなどの方法によって心を統一し、より高い境地に入ろうとする修行法。心の統一修行により絶対者と合一することで、密教では修行者の身口意と仏の身口意が合致すること。いわゆるヨガと本質的には同じものである。(コトバンク 精選版 日本国語大辞典


 境内の灯篭に「文化十三年丙子 三月吉日」と刻されている。1816年である。時の流れをしみじみと感じさせてくれる。



 瑜伽神社の万葉歌碑を巡ったあとは、鹿と戯れに散歩と洒落こむ。




 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「コトバンク 精選版 日本国語大辞典