万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2371)―

■ふじばかま■

「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ケ浦市郷土博物館発行)より引用させていただきました。

●歌は、「萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花」である。

千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(プレート)(山上憶良) 20230926撮影

●歌碑(プレート)は、千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆芽之花 乎花葛花 瞿麦之花 姫部志 又藤袴 朝▼之花

        (山上憶良 巻八 一五三八)

   ▼は「白」の下に「八」と書く。「朝+『白』の下に『八』」=「朝顔

 

≪書き下し≫萩の花 尾花(をばな) 葛花(くずはな) なでしこの花 をみなへし また藤袴(ふぢはかま) 朝顔の花

 

(訳)一つ萩の花、二つ尾花、三つに葛の花、四つになでしこの花、うんさよう、五つにおみなえし。ほら、それにまだあるぞ、六つ藤袴、七つ朝顔の花。うんさよう、これが秋の七種の花なのさ。(伊藤 博著「萬葉集 二」角川ソフィア文庫より)

 

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 この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その62改)」で、一五三七歌は「同(その61改)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

 「あさがお」について、「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)に、「秋の七草の一つ。七草の中ではこの「朝顔(あさがほ)」のみ異説がある。桔梗説・木槿説・昼顔説があり、今日でも確定できていない。・・・現在のアサガオはこの当時渡来していないし、昼顔も木槿も夕方には萎むので、夕影の中でその美しさを褒められている『朝顔』は、キキョウと考えるのが適切である。」と書かれている。

 

 

 秋の七種に因んだ歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その1027)」で紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

 「秋の七草」の花言葉について、日比谷花壇HPに次のように掲載されていますので、ここに引用させていただきました。また、花の写真につきましては、東京ガスHP「ウチコト」より引用させていただきました。

 

秋の七草花言葉

  • 萩(はぎ)

「草かんむり」に「秋」と書く、まさに秋を代表する花の1つです。秋のお彼岸にお供えする「おはぎ」の名の由来にもなっています。

花言葉〉・・・思案、内気、想い、前向きな恋、柔軟な精神

 

  • 尾花(おばな)

尾花とは「すすき」の別名です。すすきの穂が動物の尾に似ていることが、名前の由来と言われています。お月見にはかかせない飾りの1つです。

花言葉〉・・・勢力、生命力、活力、隠退、悔いなき青春、心が通じる

 

  • 葛(くず)

葛湯、葛切り、葛餅など今でも親しみ深い植物の1つです。葛の根を乾燥させた「葛根(かっこん)」は民間治療薬として、風邪や胃腸不良などの際に用いられます。

花言葉〉・・・治療、活力、根気、努力、芯の強さ、恋のため息

 

  • 撫子(なでしこ)

日本女性の清楚さを表現した「大和撫子」の「撫子」は、この花のことです。可憐な淡紅色の花を咲かせます。「枕草子」の中で、清少納言は撫子の美しさは草花の中で第1級品であるとしています。

花言葉〉・・・純愛、無邪気、思慕、貞節、才能、大胆、いつも愛して

 

  • 女郎花(おみなえし)

女郎花の名前の由来は、花の美しさが美女を圧倒するためという説があるほど、優雅で美しい花として古代の人に親しまれた花です。そのため、多くの歌や句にも詠まれています。また、女郎花の根と全草には解毒・鎮痛・利尿などの作用があります。

花言葉〉・・・美人、親切、はかない恋、心づくし、約束を守る

 

藤袴は、花の色が淡紫色で、弁の形が筒状で袴に似ていることからこの名前が付けられました。乾燥させると桜餅の桜葉と同じ良い香りがするため、洗髪や香水にも用いられます。現在では絶命危惧種に指定されており、野生の藤袴を見ることはほとんどできません。

花言葉〉・・・遅延、躊躇、思いやり、あの日を思い出す、優しい思い出

 

【7】桔梗(ききょう)

桔梗は、その形の良さから多くの武将の家紋に用いられました。中でも明智光秀の水色桔梗の家紋は有名です。桔梗の根を乾燥させ粉末にしたものは、痰や咳の薬として用いられています。藤袴と同様、絶滅危惧種に指定されている花です。

花言葉〉・・・清楚、気品、誠実、従順、変わらぬ愛、優しい温かさ

 

 

 山上憶良の、例えば、「日本挽歌」、「沈痾自哀文」、「好去好来歌」といった社会的硬歌の歌群、そして「敢布私懐歌」にみられる社会的軟歌、さらには「罷宴歌」といった茶目っ気あふれる歌、そして一五三七・一五三八歌のようないわば紙芝居クリエーターを思わす歌まで、三次元の無限の広がりを感じさせる数々の歌に驚かされる。

 そういった小宇宙を包み込む万葉集の大宇宙・・・。

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「植物で見る万葉の世界」(國學院大學「万葉の花の会」発行)

★「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ケ浦市郷土博物館発行)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「日比谷花壇HP」

★「東京ガスHP」