万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

「 惜(あたらしき) 山之 荒巻惜(をし)毛」:「あたらし」と「をし」の違い。「を(惜)し」が自分のことについていうのに対し、「あたらし」は外から客観的に見た気持ちをいう。(万葉歌碑を訪ねて―その91―)

万葉集目録には、巻十三は、雑歌二十七首、相聞歌五十七首、問答歌十八首、譬喩歌一首、挽歌二十四首とある。今日紹介する歌は、挽歌の一首である。

 

●サンドイッチは、サニーレタスとトマトそして焼き豚である。デザートは、りんごを見ると立体構造にしたい欲求にかられる。二階建て構造にしバナナ、トンプソン、レッドグローブで加飾した。

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5月28日のザ・モーニングセット

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5月28日のフルーツフルデザート

●万葉歌碑を訪ねて―その91―

 「こもりくの泊瀬の山青幡の忍阪の山は走出のよろしき山の出立の くわしき山ぞあたらしき山の荒れまく惜しも」

 

 この歌碑は、奈良県桜井市金屋 初瀬川の堤にある。

 

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奈良県桜井市金屋初瀬川堤万葉歌碑(作者未詳)

 令和元年の最初の万葉歌碑めぐりの課題は、万葉集巻一の冒頭歌の歌碑を訪れることである。前回、金屋の仏教伝来の碑の近くの歌碑を見落していたのでまずこの歌碑からスタートし、県道165号線(通称初瀬街道)沿いの歌碑めぐりの計画をたてる。(五月一四日)

 

 計画は、金屋初瀬川堤「巻十三 三三三一歌(作者未詳)」➡三輪ケ崎「巻三 二六五歌(長忌寸奥麻呂)」➡脇本春日神社「巻九 一六六四歌(雄略天皇)」➡朝倉小学校校庭「巻三 四二八歌(柿本人麻呂)」➡黒崎白山神社「巻一 一(雄略天皇)」➡出雲初瀬川沿い「巻二 一一六歌(但馬皇女)」➡桜井東中学校校庭「巻六 九九一歌(紀朝臣鹿人)」、である。

 目玉が黒崎白山神社である。ここに雄略天皇万葉集巻一の冒頭歌の歌碑がある。そして「萬葉集發燿讃仰碑」もある。

 歌碑を探し当てるのは案外難しいところがある。「公園内」とか「●●沿い」とあり、行ってもピンポイントで照準が合わせられないことがある。

 

 今回も、出雲初瀬川沿い「巻二 一一六歌(但馬皇女)」の歌碑は見つけることができなかった。しかし、一度現地を訪れていることで、消去法的にポイントを絞ることができるようになるのである。

 

 今日紹介する歌碑も、桜井市HPの所在「金屋 初瀬川の堤」から絞り込みグーグルマップで「大向寺橋北詰」の歌碑を確認しておいたのである。

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大向寺北詰

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大向寺北詰大初瀬川堤と万葉歌碑


 

 歌をみていこう。

◆隠来之 長谷之山 青幡之 忍坂山者 走出之 宜山之 出立之 妙山叙 惜 山之 荒巻惜毛

                 (作者未詳 巻十三 三三三一)

 

≪書き下し≫こもくりの 泊瀬(はつせ)の山 青旗(あをはた)の 忍坂(おさか)の山は 走出(はしりで)の よろしき山の 出立(いでたち)の くはしき山ぞ あたらしき 山の 荒れまく惜(を)しも

 

(訳)隠(こも)り処(く)の泊瀬の山、青旗のように青々としたその忍坂(おさか)の山は、横に突き出た好もしい山で、高く突き出た見事な山だ、この美しくももったいない山が人気なくなってゆくのは、残念だ。(伊藤 博 著「万葉集 三」角川ソフィア文庫より)

 

(注)はしりで【走り出】:家から走り出たところ。家の門の近く。一説に山裾や堤などが続いているところ。「わしりで」とも

(注)いでたち【出で立ち】:(山・樹木などが)突き出てそびえている姿。

(注)くはし【細し・美し】:うるわしい。細やかで美しい。

(注)あたらし【惜し】:もったいない。惜しい。

  <参考>「あたらし」と「をし」の違い。「を(惜)し」が自分のことについていうのに対し、「あたらし」は外から客観的に見た気持ちをいう。

 

 万葉集目録には、巻十三は、雑歌二十七首、相聞歌五十七首、問答歌十八首、譬喩歌一首、挽歌二十四首とある。この歌は、挽歌である。

 伊藤 博氏は、「万葉集 三」(角川ソフィア文庫)のこの歌の脚注のなかで、「忍坂の葬地に人が参らなくなる寂しさを惜しむ」書いておられる。

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉歌碑めぐり」(桜井市HP)

★「weblio古語辞書」