万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その1432)―愛知県幡豆郡吉良町 幡頭神社下駐車場―万葉集 巻九 一七二九

●歌は、「暁の夢に見えつつ梶島の磯越す波のしきてし思ほゆ」である。

愛知県幡豆郡吉良町 幡頭神社下駐車場万葉歌碑(藤原宇合

●歌碑は、愛知県幡豆郡吉良町 幡頭神社下駐車場にある。

 

●歌をみてみよう。

 

◆暁之 夢所見乍 梶嶋乃 石超浪乃 敷弖志所念

     (藤原宇合 巻九 一七二九)

 

≪書き下し≫暁(あかとき)の夢(いめ)に見えつつ梶島(かじしま)の磯越す波のしきてし思ほゆ

 

(訳)明け方の夢にたびたびあの子が見えて、梶島の磯を越す波の次から次へとしきるように、ただしきりに思われてならない。(同上)

(注)梶島:所在未詳

(注)第三、四句「梶嶋乃 石超浪乃」は「敷弖」を起こす。

(注)しく【頻く】自動詞:次から次へと続いて起こる。たび重なる。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)                           

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その553)」で紹介している。

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 藤原宇合の歌が、幡頭神社にあることが何か違和感を持ったが。歌碑の側の説明案内文をみて多少は納得がいったのである。

 西尾市HPに幡頭神社本殿について、「間社流造、桧皮葺。幡頭神社本殿は天正8年(1580)の建築で、桃山時代の様式を伝える。規模は大きくないが、手法が堅実で絵様は雄健な曲線を用い、蟇股(かえるまた)の形も内部の彫刻も素朴である。屋根は桧皮葺で大きく反りかえった庇が美しい。幡頭神社は大宝2年(702)の創建と伝えられる式内社で、祭神は建稲種命(たけいなだねのみこと)である。日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征に従った建稲種命は帰路駿河沖で遭難し、遺骸が宮崎海岸に漂着し当地に葬られたと伝えられる。」と書かれている。

 

歌の解説案内板


 歌碑の近くに建てられている西尾市教育委員会のこの歌の解説案内板に「作者の宇合は、大化の改新(六四六)で有名な藤原鎌足の孫でなかなかの文化人でした。四十歳のころ、蝦夷征伐の大将軍となって軍を進める途中、ここ宮崎の幡頭神社に戦勝祈願をしこの歌を詠んだと推定するのは決して無理ではないと思われます。ちなみに、梶島の所在については、なお二、三の説がありますが、ここはその有力地です。」と書かれている。

 

 藤原宇合の歌は万葉集には六首収録されている。六首はブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1221)」で紹介している。

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西尾市最明寺➡幡豆郡吉良町 幡頭神社■

 西尾市最明寺から幡頭神社までは約30分のドライブである。カーナビに従って幡頭神社の駐車場に到着。社殿横である。駐車場も狭く、そこには歌碑は見当たらない。さらに境内を見わたすが歌碑は見つからない。

社殿前の参道は海岸に通じているようである。

参道

 以前行ったことがある瀬戸内市牛窓牛窓神社が頭に浮かぶ。歌碑は、神社境内と思い込み本殿近くの駐車場に車を停め、効率よく探せると思いきや参道を海岸近くまで下りることになり、帰りの上りが異常にきつかったことが頭に浮かんだ。

 先達のブログに「幡頭神社前駐車場」とあったので正解だと思ったのだが。

 参道の途中にあるかもしれない。意を決し参道を下りて行く。鳥居を越えしばらく行くと海岸線が見えてくる。さらに下りると道を隔てた海岸近くの駐車場に歌碑らしいものが見える。

 「幡頭神社前駐車場」の正解はこれであった。腰の悪い家内にできるだけ歩かさないようにとの思いが裏目に。歌碑の写真を撮って境内で待っている家内の元へと参道を上る、上る。今日2回目のミニ登山である。

幡頭神社名碑

幡頭神社名碑


 ブログを書くにあたり、「幡頭神社」の近辺をグーグルマップで確認してみた。拡大してみると海岸近くになんと「万葉歌碑」のマークが!

あ~調査不足と言うほかない。

 歌碑巡り失敗談の連続である。反省。

グーグルマップを拡大して分かった万葉歌碑

 幡頭神社境内の拝殿に向かって左手に神馬舎があり、神馬が祀られている。

幡頭神社の神馬

 

牛窓神社の万葉歌碑」についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その800)」で紹介している。

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(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「グーグルマップ」

★「西尾市HP」