万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その2144)―京都府(1)京都市・京田辺市・城陽市―

 京都府は、(1)京都市京田辺市城陽市、(2)宇治市、(3)木津川市相楽郡の3つのエリアに分けて紹介してまいります。

 

京都市京田辺市城陽市

京都市右京区龍安寺住吉町 住吉大伴神社きぬかけの道側プチパーク万葉歌碑(巻十八四〇九四)■ 

京都市右京区龍安寺住吉町 住吉大伴神社きぬかけの道側プチパーク万葉歌碑(大伴家持) 20200527撮影

●歌をみていこう。

 

 題詞は、「賀陸奥國出金 詔書歌一首并短歌」<陸奥(みちのく)の國に金(くがね)を出だす詔書を賀(ほ)く歌一首并(あは)せて短歌>である。

 

◆葦原能 美豆保國乎 安麻久太利 之良志賣之家流 須賣呂伎能 神乃美許等能 御代可佐祢 天乃日嗣等 之良志久流 伎美能御代ゝゝ 之伎麻世流 四方國尓波 山河乎 比呂美安都美等 多弖麻都流 御調寶波 可蘇倍衣受 都久之毛可祢都 之加礼騰母 吾大王乃 毛呂比登乎 伊射奈比多麻比 善事乎 波自米多麻比弖 久我祢可毛 多之氣久安良牟登 於母保之弖 之多奈夜麻須尓 鶏鳴 東國能 美知能久乃 小田在山尓 金有等 麻宇之多麻敝礼 御心乎 安吉良米多麻比 天地乃 神安比宇豆奈比 皇御祖乃 御霊多須氣弖 遠代尓 可ゝ里之許登乎 朕御世尓 安良波之弖安礼婆 御食國波 左可延牟物能等 可牟奈我良 於毛保之賣之弖 毛能乃布能 八十伴雄乎 麻都呂倍乃 牟氣乃麻尓ゝゝ 老人毛 女童兒毛 之我願 心太良比尓 撫賜 治賜婆 許己乎之母 安夜尓多敷刀美 宇礼之家久 伊余与於母比弖 大伴乃 遠都神祖乃 其名乎婆 大来目主等 於比母知弖 都加倍之官 海行者 美都久屍 山行者 草牟須屍 大皇乃 敝尓許曽死米 可敝里見波 勢自等許等太弖 大夫乃 伎欲吉彼名乎 伊尓之敝欲 伊麻乃乎追通尓 奈我佐敝流 於夜能子等毛曽 大伴等 佐伯乃氏者 人祖乃 立流辞立 人子者 祖名不絶 大君尓 麻都呂布物能等 伊比都雅流 許等能都可左曽 梓弓 手尓等里母知弖 劔大刀 許之尓等里波伎 安佐麻毛利 由布能麻毛利尒 大王能 三門乃麻毛利 和礼乎於吉弖且 比等波安良自等 伊夜多氐 於毛比之麻左流 大皇乃 御言能左吉乃 <一云 乎> 聞者貴美<一云 貴久之安礼婆>

       (大伴家持 巻二十 四〇九四)

 

≪書き下し≫葦原(あしはら)の 瑞穂(みづほ)の国を 天(あま)下(くだ)り 知(し)らしめしける すめろきの 神(かみ)の命(みこと)の 御代(みよ)重(かさ)ね 天(あま)の日継(ひつぎ)と 知らし来(く)る 君の御代(みよ)御代(みよ) 敷きませる 四方(よも)の国には 山川(やまかは)を 広み厚みと 奉(たてまつ)る 御調(みつき)宝(たから)は 数(かぞ)へえず 尽(つく)くしもかねつ しかれども 我が大君(おほきみ)の 諸人(もろひと)を 誘(いざない)ひたまひ よきことを 始めたまひて 金(くがね)かも 確(たし)けくあらむと 思ほして 下(した)悩(なや)ますに 鶏(とり)が鳴く 東(あづま)の国の 陸奥(みちのく)の 小田(をだ)にある山に 金(くがね)ありと 申(まう)したまへれ 御心(みこころ)を 明(あき)らめたまひ 天地(あめつち)の 神(かみ)相(あひ)うづなひ すめろきの 御霊(みたま)助けて 遠き代(よ)に かかりしことを 我が御代(みよ)に 顕(あら)はしてあれば 食(を)す国は 栄(さか)えむものと 神(かむ)ながら 思ほしめして もののふの 八十(やそ)伴(とも)の男(を)を 奉(まつ)ろへの 向けのまにまに 老人(おいひと)も 女(をみな)童(わらは)も しが願ふ 心(こころ)足(だ)らひに 撫(な)でたまひ 治(をさ)めたまへば ここをしも あやに貴(たふと)み 嬉(うれ)しけく いよよ思ひて 大伴(おほとも)の 遠つ神(かむ)祖(おや)の その名をば 大久米(おほくめ)主(ぬし)と 負(を)ひ持ちて 仕(つか)へし官(つかさ) 海行かば 水浸(みづ)く屍(かばね) 山行かば 草(くさ)生(む)す屍(かばね) 大君(おほきみ)の 辺(へ)にこそ死なめ かへり見は せじと言立(ことだ)て ますらをの 清きその名を いにしへよ 今のをつづに 流さへる 祖(おや)の子どもぞ 大伴(おほとも)と 佐伯(さへき)の氏(うぢ)は 人の祖(おや)の 立つる言立(ことだ)て 人の子は 祖(おや)の名絶たず 大君に 奉仕(まつろ)ふものと 言ひ継(つ)げる 言(こと)の官(つかさ)ぞ 梓弓(あづさゆみ) 手に取り持ちて 剣太刀(つるぎたち) 腰(こし)に取り佩(は)き 朝(あさ)守(まも)り 夕(ゆふ)の守(まも)りに 大君(おほきみ)の 御門(みかど)の守り 我れをおきて また人はあらじ といや立て 思ひし増(ま)さる 大君(おほきみ)の 御言(みこと)の幸(さき)の <一には「を」といふ> 聞けば貴(たふと)み <一には「貴くしあれば」といふ>

 

(訳)葦原の瑞穂の国、この国を、高天原(たかまがはら)から降(くだ)ってお治めになった天皇の神の命、その神の命の御末が御代を重ねて、日の神の後継ぎとして治めて来られた貴い御代御代を通して、ずっと支配しておられる四方の国々では、山も川も広々と豊かであるとて、奉る貢(みつぎ)の宝は数えきれず、挙げ尽くしようもない。しかしながら、われらの大君が人びとを仏の道にお導きになり、善き業(わざ)をお始めになって、何とか黄金(こがね)が充分にあればとひそかに御心を砕いておられた折も折、鶏が鳴く東の国の陸奥の小田という所の山に黄金があると奏上してきたものだから、御心も晴れ晴れとなさり、「我が業を天地の神々も挙(こぞ)って嘉(よみ)したまい、代々の天皇の御霊もお助け下さって、遠い昔の代にあったと同じことを我が御代にも顕わしてくださったので、我が治める国は栄えるであろう」と、神の御子でましますままにおぼし召されて、もともろの臣下たちを心から仕えさせられるとともに、老人(おいひと)も女(おんな)子どもも、その願いが満ち足りるように、いとしみたまい治めたもうので、われらはそこのところが何とも貴くてならず、嬉(うれ)しさもいよいよつのって、大伴の遠い祖先の神、その名は大久米部の主(あるじ)という誉(ほま)れを背にお仕えしてきた役目柄、「海を行くなら水漬(みづ)く屍(かばね)、山を行くなら草生(む)す屍となり、大君の辺に死のうと本望、我が身を顧みるようなことはすまい」と言葉に唱えて誓ってきた大夫(ますらお)のいさぎよい名、その名を遠く遥かなる時代から今の今まで絶えることなく伝えてきた、祖先の末裔(まつえい)なのだ。大伴と佐伯の氏は、祖先の立てた誓いのままに、「子孫は祖先の名を絶やさず、大君にお仕えするものだ」と言い継いできた誓いを守り続ける靫負(ゆげい)の家柄であるぞ。梓の弓を手に掲げ持って、剣の太刀を腰にしっかと帯び、朝にも夕にも大君の御門を守る守り手は、われらをおいてほかに人はあるはずがないと、いよいよますます言立てしその思いはつのるばかり。大君のみ言葉のありがたさが<よ>、承るとただ貴くて<そのお言葉が貴くてならないので>。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)あしはらのみづほのくに【葦原の瑞穂の国】名詞:日本国の美称。 ※葦原にある、みずみずしい稲穂の実る国の意。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)あまのひつぎ【天の日嗣ぎ】名詞:「あまつひつぎ」に同じ。>あまつひつぎ【天つ日嗣ぎ】名詞:「天つ神」、特に天照大神(あまてらすおおみかみ)の系統を受け継ぐこと。皇位の継承。皇位。(学研)

(注)しきます【敷きます】分類連語:お治めになる。統治なさる。 ⇒なりたち:動詞「しく」の連用形+尊敬の補助動詞「ます」(学研)

(注)よも【四方】名詞:①東西南北。前後左右。四方(しほう)。②あたり一帯。いたるところ。(学研)

(注)みつき【貢・調】名詞:租・庸・調(ちよう)などの租税の総称。▽「調(つき)(=年貢(ねんぐ))」を敬っていう語。 ※「み」は接頭語。のちに「みつぎ」。(学研)

(注)確けく>確けし( 形ク ):たしかである。十分である。 (コトバンク 三省堂大辞林 第三版)

(注)下悩ますに:心中気にかけておられた時に。(伊藤脚注)

(注の注)した【下】名詞:①下。下方。下位。②内側。内部。③内心。④おかげ。もと。▽上位のものの恩顧を受ける立場。⑤劣勢。年若。力不足。低級。▽ものごとの程度が劣ること。(学研)ここでは③の意

(注)とりがなく【鶏が鳴く】:[枕]地名「東 (あづま) 」にかかる。東国の言葉が鳥のさえずりのようにわかりにくいからとも、鶏が鳴くと東から夜が明けるからともいう。(goo辞書)

(注)小田にある山:宮城県遠田群湧谷町黄金迫(はざま)の山。(伊藤脚注)

(注)申したまへれ:奏上してきたものだから。(伊藤脚注)

(注)天地の神相うづなひ:我が業を天地の神も嘉(よみ)したまい。(伊藤脚注)

(注の注)うづなふ【珍なふ】他動詞:貴重なものとする。よしとする。(神が)承諾する。(学研)

(注)奉(まつ)ろへ:心から従わせ仕えさせると共に。「奉ろへ」は下二段「奉ろふ」の名詞形、「向け」は下二段「向く」の名詞形。共に服従させること。(伊藤脚注)

(注)向け:服従させること

(注)し【其】代名詞:〔常に格助詞「が」を伴って「しが」の形で用いて〕①それ。▽中称の指示代名詞。②おまえ。なんじ。▽対称の人称代名詞。③おのれ。自分。▽反照代名詞(=実体そのものをさす代名詞)。(学研) ここでは③の意

(注)仕へし官:仕えて来た役目柄(伊藤脚注)

(注)ことだて【言立て】名詞:他に対して、はっきりと口に出して言うこと。言明。(学研)

(注)をつつ【現】名詞:今。現在。「をつづ」とも。(学研)

(注)言の官ぞ:名のある家柄なのだ。(伊藤脚注)

 

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 この歌ならびに歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その552)」で紹介している。

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京都市伏見区 天穂日命神社参道入り口万葉歌碑(巻九 一七三〇)■

京都市伏見区 天穂日命神社参道入り口万葉歌碑(藤原宇合) 20200527撮影

●歌をみていこう。

 

◆山品之 石田乃小野之 母蘇原 見乍哉公之 山道越良武

       (藤原宇合 巻九 一七三〇)

 

≪書き下し≫山科(やましな)の石田(いはた)の小野(をの)のははそ原見つつか君が山道(やまぢ)越ゆらむ

 

(訳)山科の石田の小野のははその原、あの木立を見ながら、あの方は今頃独り山道を越えておられるのであろうか。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)石田:京都府山科区の南部

(注の注)石田の杜:京都市伏見区石田森西町に鎮座する天穂日命神社(あめのほひのみことじんじゃ・旧田中神社・石田神社)の森で、和歌の名所として『万葉集』などにその名がみられます。(レファレンス協同データベース)

(注)ははそ【柞】名詞:なら・くぬぎなど、ぶな科の樹木の総称。紅葉が美しい。(学研)

 

一七二九から一七三一歌の題詞は、「宇合卿歌三首」<宇合卿(うまかひのまへつきみ)が歌三首>である。

(注)一七二九歌は望郷、一七三〇歌は、残る妻の立場、一七三一歌は、夫が前歌に応じる形の歌となっている。(伊藤脚注)

 

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 この歌ならびに他の二歌および歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その553)で紹介している。

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京都府綴喜郡井手町 六角井戸万葉歌碑(巻十九 四二七〇)■

京都府綴喜郡井手町 六角井戸万葉歌碑(橘諸兄) 20190724撮影

●歌をみてみよう。

 

◆牟具良波布 伊也之伎屋戸母 大皇之 座牟等知者 玉之可麻思乎

     (橘諸兄 巻十九 四二七〇)

 

≪書き下し≫葎(むぐら)延(は)ふ賤(いや)しきやども大君(おほきみ)の座(ま)さむと知らば玉敷かまし

 

(訳)葎の生い茂るむさくるしい我が家、こんな所にも、大君がお出まし下さると存じましたなら、前もって玉を敷きつめておくのでしたのに。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

 

 題詞は、「十一月八日在於左大臣朝臣宅肆宴歌四首」<十一月の八日に、左大臣朝臣(たちばなのあそみ)が宅(いへ)に在(いま)して肆宴(しえん)したまふ歌四首>である。(注)肆宴(しえん):宮中等の公的な宴のこと。

 

 左注は、「右一首左大臣橘卿」<右の一首は左大臣橘卿(たちばなのまへつきみ)>である。

 

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 この歌ならびに歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その190改)」で紹介している。

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六角井戸については、京都府綴喜郡井手町HP「観光・名所旧跡」に次のように記されている。

聖武天皇の玉井頓宮(たまいのとんぐう)にあったものと言い伝えられ「公(橘諸兄)の井戸」として語りつがれてきた六角井戸は、石垣地区に現存しています。 この井戸は、据え付けられた石版が6枚組み合わせたもので、六角の形となっていることから「六角井戸」と呼ばれています。

(注)頓宮(とんぐう):にわかに造った仮の宮殿。仮宮(かりみや)。(weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版)

六角井戸 20190724撮影

 

京都府綴喜郡井手町 井堤寺跡万葉歌碑(巻二十 4447)■

京都府綴喜郡井手町 井堤寺跡万葉歌碑(橘諸兄) 20190724撮影

●歌をみてみよう。

 

◆麻比之都ゝ 伎美我於保世流 奈弖之故我 波奈乃未等波無 伎美奈良奈久尓

      (橘諸兄 巻二十 四四四七)

 

≪書き下し≫賄(まひ)しつつ君が生(お)ほせるなでしこが花のみ問(と)はむ君ならなくに

 

(訳)贈り物をしてはあなたがたいせつに育てているなでしこ、あなたは、そのなでしこの花だけに問いかけるようなお方ではないはずです。(同上)

(注)まひ【幣】名詞:依頼や謝礼のしるしとして神にささげたり、人に贈ったりする物。「まひなひ」とも。※上代語(学研)

(注)花のみ問はむ君ならなくに:あなたはそのなでしこの花だけに問いかけるような、実のない方ではないはず。逆説的な感謝。(伊藤脚注)

 

 題詞は、「同月十一日左大臣橘卿宴右大辨丹比國人真人之宅歌三首」<同じき月の十一日に、左大臣橘卿(たちばなのまへつきみ)、右大弁(うだいべん)丹比國人真人(たぢひのくにひとのまひと)が宅(たく)にして宴(うたげ)する歌三首>である。

 

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 この歌と他二首ならびに歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その191改)」で紹介している。

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京都府城陽市久世 久世神社横万葉歌碑(巻九 一七〇七)■

京都府城陽市久世 久世神社横万葉歌碑(柿本人麻呂歌集) 20190905撮影

●歌をみていこう。

 

◆山代 久世乃鷺坂 自神代 春者張乍 秋者散来

       (作者未詳 巻九 一七〇七)

 

≪書き下し≫山背(やましろ)の久世(くせ)の鷺坂(さぎさか)神代(かみよ)より春は萌(は)りつつ秋は散りけり

 

(訳)山背の久世の鷺坂、この坂では、遠い神代の昔から、春には木々が芽吹き、秋には散って来たのである。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)

(注)はる【張る】①(氷が)はる。一面に広がる。②(芽が)ふくらむ。出る。芽ぐむ。   ※ここでは②の意

(注)さぎざか【鷺坂】: 京都府城陽市久世を南北に走る旧大和街道の坂。坂のある台地が鷺坂山であり、丘上に久世神社がある。(コトバンク 精選版 日本国語大辞典

(注)秋は散りけり:秋の景を眼前にしての思い。ケリは気づき。季節の規則正しさへの感慨。(伊藤脚注)

 

 題詞は、「鷺坂作歌一首」<鷺坂にして作る歌一首>である。

 

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この歌ならびに歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その195改)」で紹介している。

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京都府京田辺市飯岡 咋岡神社万葉歌碑(巻九 一七〇八)■

京都府京田辺市飯岡 咋岡神社万葉歌碑(柿本人麻呂歌集) 20190724撮影

●歌をみていこう。

 

◆春草 馬咋山自 越来奈流 鴈使者 宿過奈利

        (作者未詳 巻九 一七〇八)

 

≪書き下し≫春草を馬咋山ゆ越え来(く)なる雁の使(つかひ)は宿り過ぐなり

 

(訳)春の若草を馬が食うという、その咋山(くひやま)を越えて鳴き渡って来た雁の使いは、今しもこの旅の宿りの上空を素通りして行く。(同上)

(注)咋山(くひやま):京都府京田辺市の飯岡という。木津川(泉川)の西岸。(伊藤脚注)

(注)かりのつかひ【雁の使ひ】:《「漢書」蘇武伝の、匈奴(きょうど)に捕らえられた前漢の蘇武が、手紙を雁の足に結びつけて放ったという故事から》便り。手紙。かりのたまずさ。かりのたより。かりのふみ。雁書。雁信。雁使(がんし)。(コトバンク デジタル大辞泉より)

 

題詞は、「泉河邊作歌一首」<泉川(いづみがわ)の辺(へ)にして作る歌一首>である。

(注)泉川:木津川の古名。

 

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(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「コトバンク デジタル大辞泉

★「コトバンク 精選版 日本国語大辞典

★「コトバンク 三省堂大辞林 第三版」

★「weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版」

★「goo辞書」

★「レファレンス協同データベースHP」

★「井手町HP」