万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2412)―

■たぶのき■

「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ケ浦市郷土博物館発行)より引用させていただきました。



●歌は、「磯の上のつままを見れば根を延へて年深くあらし神さびにけり」である。

千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(プレート)(大伴家持) 20230926撮影

●歌碑(プレート)は、千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆礒上之 都萬麻乎見者 根乎延而 年深有之 神佐備尓家里

       (大伴家持 巻十九 四一五九)

 

≪書き下し≫磯(いそ)の上(うへ)のつままを見れば根を延(は)へて年深くあらし神(かむ)さびにけり

 

(訳)海辺の岩の上に立つつままを見ると、根をがっちり張って、見るからに年を重ねている。何という神々しさであることか。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)としふかし【年深し】( 形ク ):何年も経っている。年老いている。(weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版)

(注)あらし 分類連語:あるらしい。あるにちがいない。 ※なりたち ラ変動詞「あり」の連体形+推量の助動詞「らし」からなる「あるらし」が変化した形。ラ変動詞「あり」が形容詞化した形とする説もある。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

題詞は、「過澁谿埼見巌上樹歌一首  樹名都萬麻」<澁谿(しぶたに)の埼(さき)を過ぎて、巌(いはほ)の上(うへ)の樹(き)を見る歌一首   樹の名はつまま>である。

 

この四一五九歌から四一六五歌までの歌群の総題は、「季春三月九日擬出擧之政行於舊江村道上属目物花之詠并興中所作之歌」<季春三月の九日に、出擧(すいこ)の政(まつりごと)に擬(あた)りて、古江の村(ふるえのむら)に行く道の上にして、物花(ぶつくわ)を属目(しょくもく)する詠(うた)、并(あは)せて興(きよう)の中(うち)に作る歌>である。

 

 

四一五九歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その867)」で、四一五六歌までと安政五年に建てられた碑と共に紹介している。

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安政五年(1858年)に立てられた富山県高岡市太田つまま公園万葉歌碑と歌碑案内板  20201116撮影

 

 「つまま公園の歌碑」は安政五年(1858年)に立てられたのであるが、富山県で最も古い万葉歌碑は、「富山市東岩瀬 諏訪神社の歌碑」の歌碑である。こちらは嘉永6年(1853)に立てられている。

家持の「岩瀬野に秋萩しのぎ馬なめて初鷹狩りだにせずや別れむ」と建立当時の歌人千種有功の「雅たる昔の跡と岩瀬野に変はらで匂ほへ秋萩の花」が刻されている。

(注)ちくさありこと【千種有功】:江戸末期の歌人。本姓は源。号は千千迺舎(ちぢのや)。京都堂上家に生まれる。飛鳥井家に学んだが、香川景樹らと交わり、堂上風を脱した歌風となる。歌集に「千千迺舎集」「ふるかがみ」など。寛政九~嘉永七年(一七九七‐一八五四)(コトバンク 精選版 日本国語大辞典

 



 この「富山市東岩瀬 諏訪神社の歌碑」の歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その2323)」で紹介している。

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 日本で最古の歌碑といわれる、埼玉県行田市埼玉5450前玉(さきたま)神社の石灯籠は、元禄十年(1697年)建立されたものである。三三八〇歌と一七四四歌が刻されている。

 一度は訪れてみたいと考えていたが、11月19日の東京出張のついでに足を延ばして訪れたのである。

 

 

 年代を経た万葉歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その2115)」で紹介している。(これを書いた時には、まだ「富山市東岩瀬 諏訪神社の歌碑」、「前玉神社の石灯籠」には行っていませんでした。)

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 昨日、奈良市神功の「万葉の小径」のつまま(タブノキ)と歌碑を撮影してきましたので追記させていただきます。

 この「万葉の小径」の歌碑については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その491)」で紹介している。

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(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ケ浦市郷土博物館発行)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版」

★「コトバンク 精選版 日本国語大辞典