■やまざくら■
●歌は、「春雨はいたくな降りそ桜花いまだ見なくに散らまく惜しも」である。
●歌碑(プレート)は、千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園にある。
●歌をみていこう。
◆春雨者 甚勿零 櫻花 未見尓 散巻惜裳
(作者未詳 巻十 一八七〇)
≪書き下し≫春雨はいたくな降りそ桜花いまだ見なくに散らまく惜(を)しも
(訳)春雨よ、ひどくは降ってくれるな。桜の花をまだよく見ていないのに、散らしてしまうのは惜しまれてならない。(伊藤 博 著 「万葉集 二」 角川ソフィア文庫より)
(注)まく …だろうこと。…(し)ようとすること。 ※派生語。語法活用語の未然形に付く。 なりたち推量の助動詞「む」の古い未然形「ま」+接尾語「く」(学研)
この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その218)」で京都府城陽市寺田 正道官衙遺跡公園の歌碑ならびに「春雨」を詠った歌と共に紹介している。
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京都府城陽市寺田 正道官衙遺跡について、(一社)京都山城地域振興社 京都府南部(山城地域)の観光情報サイトに、「久世郡の郡役所跡とされる遺跡:この遺跡は、古墳時代(5世紀)の小形の古墳と、6世紀後半から7世紀にかけての集落跡、7世紀以降の整然と配置された大型掘立柱建物群による官衙遺構等が重なり合う複合遺跡。官衙建物群の一部を復元し、史跡公園として楽しめる。」と紹介されている。
この史跡公園の周辺に万葉歌碑が30基立てられている。さらに「古代城陽を詠んだ万葉歌」六首の石碑もある。
「古代城陽を詠んだ万葉歌」六首をみてみよう。
- 白鳥の鷺坂山の松蔭に宿りて行かな夜も更けゆくを(柿本人麻呂歌集 9-1687)
この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その195)」で紹介している。
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この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その555)」で紹介している。
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- 山背の久世の鷺坂神代より春は萌りつつ秋は散りけり(柿本人麻呂歌集 9-1707)
この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その366)」で紹介している。
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➃山背の久世の社の草な手折りそ我が時と立ち栄ゆとも草な手折りそ(柿本人麻呂歌集 7-1286)
この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その226)」で紹介している。
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- 山背の久世の若子が欲しと言ふ我れあふさわに我れを欲しと言ふ山背の久世 (柿本人麻呂歌集 11-2362)
この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その226-5)」で紹介している。
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- 玉くせの清き川原にみそぎして斎ふ命は妹がためこそ(作者未詳 11-2403)
この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その226-6)」で紹介している。
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昨日、ブログ作成のため、京都府城陽市や木津川市の万葉歌碑関連の記事を調べていたら、京都府木津川市鹿背山東大平の「鹿背山歌碑(万葉歌碑)」が掲載されていた。
ノーマークであった。車で15分のところにある。
早速、今朝超ミニ万葉歌碑巡りのドライブである。
歌をみてみよう。
◆鹿脊之山 樹立牟繁三 朝不去 寸鳴響為 鸎之音
(田辺福麻呂 巻六 一〇五七)
≪書き下し≫鹿背(かせ)の山木立(こだち)を茂(しげ)み朝さらず来鳴き響(とよ)もすうぐひすの声
(訳)鹿背の山、この山には木立がいっぱい茂っているので、朝毎にやって来ては鶯が鳴き立てている。(伊藤 博 著 「万葉集二」 角川ソフィア文庫より)
(注)鹿背山:山城郷土資料館の木津川をはさんだ南東方向にある。
一〇五三(長歌)と反歌(一〇五四~一〇五八)の歌群からなっている。
この歌群については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その182改)」で紹介している。
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諸般の事情で、万葉歌碑巡りがご無沙汰状態にあったが、たとえ一基でも訪ねて行けるのは嬉しいことである。
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ケ浦市郷土博物館発行)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」
★「(一社)京都山城地域振興社HP」