●歌は、「勝鹿の真間の井見れば立ち平し水汲ましけむ手児名し思ほゆ」である。

●歌碑は、千葉県市川市真間 手児奈堂にある。
●歌をみていこう。
題詞は、「詠勝鹿真間娘子歌一首幷短歌」<勝鹿(かつしか)の真間(まま)の娘子(をとめ)を詠む歌一首 幷せて短歌>である。
(注)勝鹿:江戸川の下流、東京湾に至るまでの周辺の地。(伊藤脚注)
(注)真間娘子:千葉県市川市真間あたりの伝説上の娘子。(伊藤脚注)
◆勝壮鹿之 真間之井見者 立平之 水挹家武 手兒名之所念
(高橋虫麻呂 巻九 一八〇八)
≪書き下し≫勝鹿(かつしか)の真間(まま)の井(ゐ)見れば立ち平(なら)し水汲(く)ましけむ手児名(てごな)し思(おも)ほゆ
(訳)勝鹿の真間の井を見ると、毎日何度もやって来ては、ここで水を汲んでおられたという手児名が偲(しの)ばれてならない。(同上)
(注)立ち平し:地面が平らになるほど何度も来て立って。(伊藤脚注)
(注の注)たちならす 【立ち均す・立ち平す】他動詞:地面を平らにするほど行き来する。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)
(注)手児名:女への愛称。「手児」は手に抱く子が原義だが、ここはいとしい娘子の意。「名」は愛称の接尾語。(伊藤脚注)
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この歌については、長歌(一八〇七)とともに、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その2589②)」で紹介している。
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市川市観光協会HPに、手児奈堂について次のように書かれている。
「下総国葛飾郡真間の井戸汲みの少女手児奈は、あまりの美しさから多くの男たちから求婚され、困り果てて真間の入江に身を投げた伝説が残ります。『手児奈霊堂』は、この手児奈を祀ったもので、いまでは、安産の神さまとして、多くの人々がお参りにいきます。」




亀井院境内に「真間の井」と「歌碑(巻九 一八〇八)」がある。一番肝心なところを抜かしてしまうという大失態をしでかしてしまった。機会を設けて是非リベンジしたい。



(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」