万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その193)―京都府木津川市山城町 アスピアやましろ―

●歌は、「手束弓手に取り持ちて朝猟に君は立たしぬ棚倉の野に」である。

 

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木津川市山城町 アスピアやましろ万葉歌碑(作者未詳)

●歌碑は、京都府木津川市山城町 山城総合文化センター(アスピアやましろ) にある。

 

 8月いっぱいは、熱中症対策ではないが、外出を控えていたので、久しぶりの万葉歌碑めぐりである(令和元年9月5日)。

 「一日一万葉歌碑紹介」をしようと毎日ブログを書いているが、そろそろ手持ちの万葉歌碑の在庫が少なくなってきたといった事情もある。

 木津川市アスピアやましろ➡久世郡荒見神社➡城陽市正道官衙遺跡公園➡城陽市久世神社➡宇治市朝霧橋東詰➡宇治市中の島➡宇治市観光センターと欲張った計画をたてる。

 

 手始めが、アスピアやましろである。

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アスピアやましろ

 精華町役場横の道を府道22号線を北に進み、交差点「谷」を右折、木津川の開橋を渡る。左手斜め前方にまわりにそぐわない比較的大きな建物が見えて来る。それが、「アスピアやましろ」である。

歌碑は、正面入口向かって左手にあった。

 

●歌をみていこう。

 

◆手束弓 手尓取持而 朝獦尓 君者立之奴 多奈久良能野尓

                                              (作者未詳 巻十九 四二五七)

 

≪書き下し≫手束弓(たつかゆみ)手に取り持ちて朝猟(あさがり)に君は立たしぬ棚倉の野に

 

(訳)手束弓をしっかりと手に取り持って、朝の猟場に我が君はお立ちになっている。ここ棚倉の野に。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)たつかゆみ【手束弓】:手に握り持つ弓。一説に握るところの太い弓。手束の弓。

(注)棚倉の野(たなくらのの)については、木津川市観光協会HP「木津川市ゆかりの万葉歌」に次のような説があると紹介されている。

       ①「旧棚倉村周辺」説  木津川市山城町平尾・綺田など

  ②「井手」説      綴喜郡井手町大字井手

  ③「棚倉孫神社周辺」説    京田辺市田辺棚倉付近

  ※ちなみに、アスピアやましろは、京都府木津川市山城町平尾前田24である。

 

 題詞は、「十月廿二日於左大辨紀飯麻呂朝臣家宴歌三首」<十月二十二日に、左大辨(さだいべん)紀飯麻呂朝臣(きのいひまろあそみ)が家にして宴(うたげ)する歌三首>である。

 

 左注は、「右一首治部卿船王傳誦之 久迩京都時歌 未詳作主也」<右の一首は、治部卿(ぢぶきょう)船王(ふねのおほきみ)伝誦(でんしょう)す。 久邇(くに)の京都(みやこ)の時の歌。 いまだ作主を詳(つばひ)らかにせず。>である。

 

 

 他の二首もみていこう。

 

◆明日香河 ゝ戸乎清美 後居而 戀者京 弥遠曽伎奴

                (中臣清麻呂 巻十九 四二五八)

 

≪書き下し≫明日香川(あすかがは)川門(かはと)を清み後(おく)れ居(ゐ)て恋ふれば都いや遠そきぬ

 

(訳)明日香川、この川の渡し場が清らかなので、旧い都に残って今の都を恋い慕ううちに、都はさらにかえっていよいよ遠退いてしまった。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

 

 左注は、「右一首左中辨中臣朝臣清麻呂傳誦 古京時歌也」<右の一首は、左中弁(さちゆうべん)中臣朝臣(なかとみのあそん)清麻呂(きよまろ)伝誦す。 古京の時の歌>である。

(注)古京時歌:旧都明日香に残っていた時の意で、一族の気持ちを代弁する清麻呂自身の旧作を伝誦したものか。

 

 堀内民一氏は、著「大和万葉―その歌の風土」(創元社)のなかで、「飛鳥川の川瀬(川の渡し場)が、清らかなのに心ひかれて、後にのこって焦がれていると、都が非常に遠くへ行ってしまった感に打たれたのである。この歌は清麿が歌い伝えていたもので、奈良へ都が移った当時、藤原の都にのこっていた人の歌だという左注である。」と解説しておられる。

 

 

◆十月 之具礼能常可 吾世古河 屋戸乃黄葉 可落所見

                 (大伴家持 巻十九 四二五九)

 

≪書き下し≫十月(かむなづき)しぐれの常(つね)か我が背子(せこ)がやどの黄葉(もみぢば)散りぬべく見ゆ

 

(訳)十月(かんなづき)のこの時雨(しぐれ)の雨の習いなのか、あなた様のお庭のもみじは、美しく色づいて今にも散りそうに見えます。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

 

 左注は、「右一首少納言大伴宿祢家持當時矚梨黄葉作此歌也」<右の一首は、少納言(せうなごん)大伴宿禰家持、時に当りて梨の黄葉を矚(み)てこの歌を作る>である。

 

 巻十九は、家持の「歌日記」的色彩が強いといわれるが、この三首も形体的な特徴をもっていると言える。

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「大和万葉―その歌の風土」 堀内民一 著 (創元社

★「木津川市ゆかりの万葉歌」 (木津川市観光協会HP)

★「weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版」

 

●本日のザ・モーニングセット&フルーツフルデザート

 サンドイッチは、レタス、トマトそして焼き豚である。砥部焼の大皿に井戸枠組にし真ん中に野菜ジュースのグラスを配した。デザートは、いちぢくを六等分に縦切りし、並べ、周囲をブドウで加飾、干しぶどうをアクセントに使った。

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9月11日のザ・モーニングセット

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9月11日のフルーツフルデザート