万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界へ飛び込もう(その2985)―書籍掲載歌を中軸に(Ⅲ)―庭園文化(3)

「『なでしこ』は、家持が偏愛した花なのでした。・・・家持と坂上大嬢との間には、『なでしこ』に関わる思い出のあったことです。若い日の家持は、こんな歌を大嬢に贈っているのです。

 (春の相聞 巻八の一四四八)(歌は省略)

 この歌は巻八の『春の相聞(そうもん)』の冒頭に位置する歌です。したがって、秋の開花を『いつしかも』と待つ歌なのです。しかし、それはそのまま、大嬢の女性としての成長を待つ歌となっています。家持は、それを『なでしこ』の開花と重ね合わせているのです。ときに、天平五(七三三)年春のことです。・・・」(「万葉集の心を読む」 上野 誠著 角川ソフィア文庫より)

万葉集の心を読む (角川ソフィア文庫) [ 上野 誠 ]

価格:990円
(2025/7/31 02:58時点)
感想(0件)

万葉集の心を読む【電子書籍】[ 上野 誠 ]

価格:660円
(2025/7/31 02:59時点)
感想(0件)

 

 春の相聞 巻八 一四四八歌をみていこう。

■巻八 一四四八歌■

題詞は、「大伴宿祢家持贈坂上家之大嬢歌一首」<大伴宿禰家持が、坂上家(さかのうえのいへ)の大嬢に贈る歌一首>である。

(注)坂上家の大嬢:大伴宿奈麻呂大伴坂上郎女の娘。家持の正妻。(伊藤脚注)

 

◆吾屋外尓 蒔之瞿麦 何時毛 花尓咲奈武 名蘇経乍見武

       (大伴家持 巻八 一四四八)

 

≪書き下し≫我がやどに 蒔(ま)きしなでしこ いつしかも 花に咲きなむ なそへつつ見む

 

(訳)わたしの家の庭に 蒔いたなでしこの花 いつになったら 花は咲くのだろうか その花を君だと思って 僕は見るだろう 僕は見る(「万葉集の心を読む」 上野 誠著 角川ソフィア文庫より)

(注)なでしこ:撫でし子の意を強く匂わす。(伊藤脚注)

(注)いつしかも:早く咲いてほしいという願望。大嬢の成長への期待。(伊藤脚注)

(注の注)いつしかも 【何時しかも】分類連語:〔下に願望の表現を伴って〕早く(…したい)。今すぐにも(…したい)。 ⇒なりたち:副詞「いつしか」+係助詞「も」(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)「なそふ」はなぞらえる。花そのものを大嬢として見る意。(伊藤脚注)

(注の注)なそふ 【準ふ・擬ふ】他動詞:なぞらえる。他の物に見立てる。 ※後には「なぞふ」とも。(学研)

 

 この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その168改)」で奈良県高市郡明日香村 雷橋上流100mほどの右岸、飛鳥川沿い万葉歌碑とともに紹介している。

 ➡ 

tom101010.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

奈良県高市郡明日香村 雷橋上流100mほどの右岸、飛鳥川沿い万葉歌碑 
大伴家持 8-1448) 20190708撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集の心を読む」 上野 誠著 (角川ソフィア文庫

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」