万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

ザ・モーニングセット190104(お酒の器の歴史)

●今日のサンドイッチは、ロメインレタスとローストビーフが中身である。信楽焼の長方皿に盛りラディッシュを飾り付けた。

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1月4日のモーニングセット

 デザートは、みかんの輪切り半分を皿の周辺に交互に並べた。ブドウ、バナナをあしらい干しブドウでアクセントをつけた。

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1月4日のデザート

 お正月といえば、一般的には日本酒がつきものである。ここでは、このお酒を飲むための器に焦点をあててみよう。

 

●酒器の歴史

 お酒の歴史は飲む歴史であり、同時に酒器の歴史でもある。そこで「お酒を飲むための器」の変遷をおってみる。

 

 古来、お酒は神事の主役の一つであることから、酒の容器や杯は神饌具であった。弥生時代から用いられたと思われる素焼きの土器「かわらけ」などはその後も長い寿命を保ち続け、現在でも神饌具として用いられている。神前結婚式をはじめ様々な神事で「かわらけ」に注がれたお酒を飲む場面に遭遇した方は多いと思う。

 「かわらけ」は平たく浅い碗状をしている。この形がどこからきているかについて面白い記述がある。「ビール、ウィスキー、ワイン、たいがいの飲み物は、底が深い器で飲むと相場が決まっている。有史以前から、酒の器の底がある程度深いものということは、中国やオリエントなどで発掘された出土品からも証明済み。しかし、日本の杯だけが何故か平たいのである。これは日本が海に囲まれていることに深く関係している。貝塚がいたるところにあるように、大昔から、日本人は貝殻を食器や器として用いてきた。そして、土器で酒器を作るようになっても、貝殻のイメージで杯は底の浅い平たいものとなった。」(酔人倶楽部編「酒・無用の雑学知識」ワニ文庫)

 奈良時代になると、食器は土器と須恵器が一般的になり、酒や湯を入れる容器は、提瓶(さけべ)、瓶子(へいし)と呼ばれた。坩(つぼ)に酒を入れ、坏(つき)を使ってお酒を飲んでいた。お酒を飲むための坏(つき)というところから酒坏(さかづき)と呼ばれるようになったのもこの頃からである。

 平安時代には、食生活の多様化から食器の種類も増え、それにつれ名称も多様化して来る。宮中や貴族の使用する食器には新たに漆塗りの食器が加わった。一般的にはこの頃の坏は碗よりも小さく浅めの容器で土製で、土器(かわらけ)ともいった。用途や形状を冠した名称が多く、汁漬坏、油坏、餅坏、片坏、窪坏、酒坏と呼ばれていた。

 鎌倉時代になると宋の製陶技術が伝来し、青磁白磁、陶器といった多様な食器が国内でも多く生産され使われるようになってきた。六古窯と呼ばれる瀬戸、常滑信楽丹波備前、越後が生産地として発達してきたのである。

 一方、漆器では根来塗(ねごろぬり)が現れ、木器の鎌倉彫の食器とともに特色を発揮した。平安時代の金色燦爛な蒔絵とくらべ素朴であった。

 室町時代の酒宴の様子は「酒飯論絵詞」に描かれているように、酒樽や酒瓶から酒を出し、提子(ひさご)に入れて座敷まで運び、銚子に移し、大きな漆器の盃で回し飲みしたようである。

 安土桃山時代茶の湯の流行とともに懐石料理が登場した。茶の湯の発達により茶人に茶器が珍重された時代であった。漆器は根来塗りが大量に作られ、酒器は太鼓樽や角樽が用いられた。飲む器は盃が主体であった。

 江戸時代には陶磁器は画期的な発展を遂げる。文禄・慶長の役(やきもの戦争とも呼ばれた)で朝鮮から多くの陶工を連れ帰り自国での陶磁器の生産を図ったからである。

「盃は古いものでは径二寸八分、深さ一寸八分、底の高さ五分、朱の漆器の木盃であった。近世の木盃は五寸二分、深さ五分の黒塗りで、糸底がある。文政の頃は猪口(ちょく)といって、小さな陶製の口径二寸、深さ二分位の太白(白釉)のものが作られ、上方では藍絵・金銀の文様のものも作られた。」(渡辺 実「日本食生活史」吉川弘文館)この頃、大猪口と呼ばれるものが現れている。

 江戸時代も半ばになると、盃の多くは陶磁器に変わった。初めの頃は大きな漆器の酒杯の大きさにならって、径が10センチメートル位の大きなものであった。江戸から明治と時代を経るにつれ次第に小さくなり、形も模様も多様で美しくなり、酒席の楽しさを一層盛り上げるには不可欠なものとなっていった。

 盃の小型化には当時のお酒の質の変化や飲酒の多様化などの影響が大きいと言われている。

 江戸時代の後半には酒造技術が大幅に進歩した。お酒の質も軽快ですっきりしたものに変わってきたのである。お酒のアルコールの度数も上がりそれにつれ酒杯の大きさが小さくなるのは健康に配慮した先人達の知恵である。

 日本酒は幅広い温度領域で楽しめるのであるそれだけに、容器の材質、大きさ等々多種多様な器が用いられる。これについても別の機会に書くことにしたい。