万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉集の世界に飛び込もう―万葉歌碑を訪ねて(その2408)―

■すだじい■

「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ケ浦市郷土博物館発行)より引用させていただきました。

●歌は、「家なれば笱に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る」である。

千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園万葉歌碑(プレート)(有間皇子) 20230926撮影

●歌碑(プレート)は、千葉県袖ケ浦市下新田 袖ヶ浦公園万葉植物園にある。

 

●歌をみていこう。

 

◆家有者 笱尓盛飯乎 草枕 旅尓之有者 椎之葉盛

        (有間皇子 巻二 一四二)

 

≪書き下し≫家なれば笱(け)に盛(も)る飯(いひ)を草枕旅(たび)にしあれば椎(しひ)の葉に盛る

 

(訳)家にいる時にはいつも立派な器物(うつわもの)に盛ってお供えをする飯(いい)なのに、その飯を、今旅の身である私は椎(しい)の葉に盛って神祭りをする。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)

(注)け【笥】名詞:容器。入れ物。特に、食器。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

 

 この歌については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(番外岩代)」で、「有間皇子結松記念碑」と共に紹介している。

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有間皇子ゆかりの地などを写真で追ってみよう。

有間皇子神社■


有間皇子の墓■

 有間皇子神社については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その746)」で、有間皇子の墓については、同「同(その747)」で紹介している。

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有間皇子之碑ならびに真白良媛の像■

 有間皇子之碑ならびに真白良媛の像については、拙稿ブログ「万葉歌碑を訪ねて(その白浜番外、1188)」で紹介している。

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 有間皇子の謀反の背景と皇子に対する同情歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その197)」で紹介している。

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椎の葉にのせてお供えする習慣が和歌山県日高郡みなべ町一帯にあることから風土と結びつけた歌の解釈等についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その217)」で紹介している。

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 「笥」は、おそらく土師器のかわらけのようなものであろう。やきものに関する歌についてブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1145)」で紹介している。

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 犬養 孝氏は、その著「万葉の旅 中 近畿・東海・東国」(平凡社)の中で、「皇子は、異郷での見馴れない風習による体験によって、非常厳粛の旅におかれた身の上が自覚されればされるほど、『笥(け)に盛(も)る飯(いひ)』(食器に盛る飯)の順境の日が回想され、順境といまの逆境とは『盛る飯』の事実をめぐって『家にあれば』と『旅にしあれば』に対比され、無念切実の哀韻を、叫ばずして敬虔に訴えるものがあるとみられる。

両歌とも、草枕のあわただしい旅をつづけて、・・・岩代独自の風土の中におかれた場合の非情の歴史を生きる人間にしてはじめて発し得る、生命のじかの声といえるのではなかろうか。そこには心ならずも生命のはばまれる日をむかえるようになった者の、おさえられた魂の躍動がある。」と書かれている。

 

 

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫

★「万葉の旅 中 近畿・東海・東国」 犬養 孝 著 (平凡社

★「万葉植物園 植物ガイド105」(袖ケ浦市郷土博物館発行)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」