万葉集の歌碑めぐり

万葉歌碑をめぐり、歌の背景等を可能な限り時間的空間的に探索し、万葉集の万葉集たる所以に迫っていきたい!

万葉歌碑を訪ねて(その1764~1766)―坂出市沙弥島 万葉樹木園(38)~(40)―万葉集巻十八 四一〇九、巻十九 四一四〇、巻十九 四一五九

―その1764―

●歌は、「紅はうつろふものぞ橡のなれにし衣になほしかめやも」である。

坂出市沙弥島 万葉樹木園(38)万葉歌碑(大伴家持

●歌碑は、坂出市沙弥島 万葉樹木園(38)にある。

 

●歌をみてみよう。

 

題詞は、「教喩史生尾張少咋歌一首并短歌」<史生(ししやう)尾張少咋(をはりのをくひ)を教へ喩(さと)す歌一首 并(あは)せて短歌>である。

 

◆久礼奈為波 宇都呂布母能曽 都流波美能 奈礼尓之伎奴尓 奈保之可米夜母

      (大伴家持 巻十八 四一〇九)

 

≪書き下し≫紅(くれなゐ)はうつろふものぞ橡(つるはみ)のなれにし衣(きぬ)になほしかめやも

 

(訳)見た目鮮やかでも紅は色の褪(や)せやすいもの。地味な橡(つるばみ)色の着古した着物に、やっぱりかなうはずがあるものか。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)紅:紅花染。ここでは、遊女「左夫流子」の譬え(伊藤脚注)

(注)橡(つるはみ)のなれにし衣(きぬ):橡染の着古した着物。妻の譬え(伊藤脚注)

(注)つるばみ【橡】名詞:①くぬぎの実。「どんぐり」の古名。②染め色の一つ。①のかさを煮た汁で染めた、濃いねずみ色。上代には身分の低い者の衣服の色として、中古には四位以上の「袍(はう)」の色や喪服の色として用いた。 ※ 古くは「つるはみ」。(weblio古語辞典 学研全訳古語辞典)

(注)なる【慣る・馴る】自動詞:①慣れる。②うちとける。なじむ。親しくなる。③よれよれになる。体によくなじむ。◇「萎る」とも書く。④古ぼける。◇「褻る」とも書く。(学研)ここでは④の意

(注)しかめやも【如かめやも】分類連語:及ぼうか、いや、及びはしない。 ⇒なりたち:動詞「しく」の未然形+推量の助動詞「む」の已然形+係助詞「や」+終助詞「も」(学研)

 

 左注は、「右五月十五日守大伴宿祢家持作之」<右は、五月の十五日に、守(かみ)大伴宿禰家持作る>である。

 

この歌を含む、四一〇六から四一〇九歌すべては、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その123改)」で紹介している。(初期のブログであるのでタイトル写真には朝食の写真が掲載されていますが、「改」では、朝食の写真ならびに関連記事を削除し、一部改訂いたしております。容赦下さい。)

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 「橡(つるばみ)」は万葉集では六首が収録されている。これについては、ブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その587)」で紹介している。

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 「紅(=左夫流子)はうつろふもの」と「橡(=古女房)のなれにし衣」を対比し「しかめやも」と比較して結論付ける、論理明快、説得力ある言い回しである。

 

 

                         

―その1765―

●歌は、「我が園の李の花か庭に散るはだれのいまだ残りてあるかも」である。

坂出市沙弥島 万葉樹木園(39)万葉歌碑(大伴家持

●歌碑は、坂出市沙弥島 万葉樹木園(39)にある。

 

●歌をみてみよう。

 

題詞は、「天平勝寶二年三月一日之暮眺矚春苑桃李花作二首」<天平勝宝(てんぴやうしようほう)二年の三月の一日の暮(ゆうへ)に、春苑(しゆんゑん)の桃李(たうり)の花を眺矚(なが)めて作る二首>である。四一三九、四一四〇歌の二首である。四一三九歌は「春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ娘子」である。いずれも、家持が目の前の実景を踏まえて詠んだ歌と言うより「漢詩的風景」を頭の中に描き詠んだものと思われる。

 

◆吾園之 李花可 庭尓落 波太礼能未 遣在可母

      (大伴家持 巻十九 四一四〇)

 

≪書き下し≫我(わ)が園の李(すもも)の花か庭に散るはだれのいまだ残りてあるかも

 

(訳)我が園の李(すもも)の花なのであろうか、庭に散り敷いているのは。それとも、はだれのはらはら雪が残っているのであろうか。(同上)

(注)はだれ【斑】名詞:「斑雪(はだれゆき)」の略。(学研)

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その583)」で紹介している。

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 「すもも」について、広島大学附属福山中・高等学校/編著「万葉植物物語」(中国新聞社)には、「スモモは、万葉集でこの一首だけに詠まれています。形は桃に似ていて、食べると酸っぱいのでスモモという名前がつきました。「李下(りか)に冠を正さず」という諺(ことわざ)が中国から伝わっているように、中国では古くから栽培されていました。中国では五果の一つとして貴ばれ、多くの栽培品種があります。(後略)」と書かれている。

(注)五果:古代中国では、桃、李、杏、棗、栗のこと。

 

 

 

―その1766―

●歌は、「磯の上のつままを見れば根を延へて年深くあらし神さびにけり」である。

坂出市沙弥島 万葉樹木園(40)万葉歌碑(大伴家持

●歌碑は、坂出市沙弥島 万葉樹木園(40)にある。

 

●歌をみてみよう。

 

題詞は、「過澁谿埼見巌上樹歌一首  樹名都萬麻」<澁谿(しぶたに)の埼(さき)を過ぎて、巌(いはほ)の上(うへ)の樹(き)を見る歌一首   樹の名はつまま>である。

(注)つまま:たぶの木。クスノキ科の常緑高木。葉は樟に似て、老樹は根が盛り上がって荘厳。(伊藤脚注)

 

 

◆礒上之 都萬麻乎見者 根乎延而 年深有之 神佐備尓家里

       (大伴家持 巻十九 四一五九)

 

≪書き下し≫磯(いそ)の上(うへ)のつままを見れば根を延(は)へて年深くあらし神(かむ)さびにけり

 

(訳)海辺の岩の上に立つつままを見ると、根をがっちり張って、見るからに年を重ねている。何という神々しさであることか。(伊藤 博 著 「万葉集 四」 角川ソフィア文庫より)

(注)としふかし【年深し】( 形ク ):何年も経っている。年老いている。(weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版)

(注)あらし 分類連語:あるらしい。あるにちがいない。 ※なりたち ラ変動詞「あり」の連体形+推量の助動詞「らし」からなる「あるらし」が変化した形。ラ変動詞「あり」が形容詞化した形とする説もある。(学研)

(注)かみさぶ【神さぶ】自動詞:①神々(こうごう)しくなる。荘厳に見える。②古めかしくなる。古びる。③年を取る。 ※「さぶ」は接尾語。古くは「かむさぶ」。(学研)ここでは①の意

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その867)」で紹介している。

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 四一五九歌に詠われている「神さび」は、荘厳な響きに聞こえる。「神さび」を詠った歌をみてみよう。

 

■巻一 三八歌■

◆安見知之 吾大王 神長柄 神佐備世須登 芳野川 多藝津河内尓 高殿乎 高知座而・・・

       (柿本人麻呂 巻一 三八)

 

≪書き下し≫やすみしし 我(わ)が大君 神(かむ)ながら 神(かむ)さびせすと 吉野川 たぎつ河内(かふち)に 高殿(たかとの)を 高知(たかし)りまして ・・・

 

(訳)安らかに天の下を支配されるわれらが大君、大君が神であるままに神らしくなさるとて、吉野川の激流渦巻く河内に、高殿を高々とお造りのなり、・・・(「万葉集 一」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

(注)「神ながら 神さびせすと」:神のままに神らしくなさるとて。(伊藤脚注)

(注)せす【為す】分類連語:なさる。あそばす。 ※上代語。 ⇒なりたち サ変動詞「す」の未然形+上代の尊敬の助動詞「す」(学研)

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1324)」で紹介している。

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■巻一 四五歌■

 柿本人麻呂の四五歌(題詞、軽皇子、安騎の野に宿ります時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌)は、詠いだしがほぼ三八歌と同じなのでここではブログの紹介にとどめます。

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二五七から二五九歌の題詞は、「鴨君足人香具山歌一首 幷短歌」<鴨君足人(かものきみたりひと)が香具山(かぐやま)の歌一首 幷(あは)せて短歌>である。

 

 

■巻三 二五九歌■

◆何時間毛 神左備祁留鹿 香山之 鉾椙之本尓 薜生左右二

       (鴨君足人 巻三 二五九)

 

≪書き下し≫いつの間(ま)も神(かむ)さびけるか香具山(かぐやま)の桙杉(ほこすぎ)の本(もと)に苔(こけ)生(む)すまでに

 

(訳)いつの間にこうも人気がなく神さびてしまったのか。香具山の尖(とが)った杉の大木の、その根元に苔が生すほどに。(同上)

(注)ほこすぎ【矛杉・桙杉】:矛のようにまっすぐ生い立った杉。(広辞苑無料検索)

(注)桙杉(ほこすぎ)の本(もと):矛先の様にとがった、杉の大木のその根元。(伊藤脚注)

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1466)」で紹介している。

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■巻三 三一七歌■

 三一七および三一八歌の題詞は、「山部宿祢赤人望不盡山歌一首并短歌」<山部宿禰赤人、富士(ふじ)の山を望(み)る歌一首并(あは)せて短歌>である。

 

◆天地之 分時従 神左備手 高貴寸 駿河有 布士能高嶺乎 天原 振放見者 度日之陰毛隠比 照月乃 光毛不見 白雲母 伊去波伐加利 時自久曽 雪者落家留 語告 言継将徃 不盡能高嶺者

       (山部赤人 巻三 三一七)

 

≪書き下し≫天地(あめつち)の 分(わか)れし時ゆ 神(かむ)さびて 高く貴(た

ふと)き 駿河(するが)なる 富士(ふじ)の高嶺(たかね)を 天(あま)の原(はら) 振り放(さ)け見れば 渡る日の 影(かげ)も隠(かく)らひ 照る月の 光も見えず 白雲(しらくも)も い行きはばかり 時じくぞ 雪は降りける 語り告(つ)げ 言ひ継ぎ行かむ 富士(ふじ)の高嶺は

 

(訳)天と地の相分かれた神代の時から、神々しく高く貴い駿河の富士の高嶺を、大空はるかに振り仰いで見ると、空を渡る日も隠れ、照る月の光も見えず、白雲も行き滞り、時となくいつも雪は降り積もっている。ああ、まだ見たことのない人に語り聞かせ、のちのちまでも言い継いでゆこう。この神々しい富士の高嶺は。(同上)

(注)ときじ【時じ】形容詞:①時節外れだ。その時ではない。②時節にかかわりない。常にある。絶え間ない。 ※参考上代語。「じ」は形容詞を作る接尾語で、打消の意味を持つ。(学研)

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その416)」で紹介している。

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■巻三 四二〇歌■

題詞は、「石田王卒之時丹生王作歌一首 幷短歌」<石田王(いはたのおほきみ)が卒(みまか)りし時に、丹生王(にふのおほきみ)が作る歌一首 幷(あは)せて短歌>である。

 

◆名湯竹乃 十縁皇子 狭丹頬相 吾大王者 隠久乃 始瀬乃山尓 神左備尓 伊都伎坐等 玉梓乃 人曽言鶴・・・

       (丹生王 巻三 四二〇)

 

≪書き下し≫なゆ竹の とをよる御子(みこ) さ丹(に)つらふ 我(わ)が大君(おほきみ)は こもりくの 泊瀬(はつせ)の山に 神(かむ)さびに 斎(いつ)きいますと 玉梓(たまづさ)の 人ぞ言ひつる・・・

 

≪書き下し≫なゆ竹の とをよる御子(みこ) さ丹(に)つらふ 我(わ)が大君(おほきみ)は こもりくの 泊瀬(はつせ)の山に 神(かむ)さびに 斎(いつ)きいますと 玉梓(たまづさ)の 人ぞ言ひつる(同上)

(注)なゆたけ【萎竹】名詞:「なよたけ」に同じ。

(注)なよたけの【弱竹の】分類枕詞:①細いしなやかな若竹がたわみやすいところから、「とをよる(=しんなりとたわみ寄る)」にかかる。②しなやかな竹の節(よ)(=ふし)の意で、「よ」と同音の「夜」「世」などにかかる。 ※「なよだけの」「なゆたけの」とも。(学研)

(注)とをよる【撓寄る】自動詞:しなやかにたわむ。(学研)

(注)さにつらふ【さ丹頰ふ】分類連語:(赤みを帯びて)美しく映えている。ほの赤い。 ⇒参考 赤い頰(ほお)をしているの意。「色」「君」「妹(いも)」「紐(ひも)」「もみぢ」などを形容する言葉として用いられており、枕詞(まくらことば)とする説もある。 ⇒なりたち 接頭語「さ」+名詞「に(丹)」+名詞「つら(頰)」+動詞をつくる接尾語「ふ」(学研)

(注)かむさび【神さび】名詞:神らしい振る舞い。神々(こうごう)しく振る舞うこと。(学研)

(注)たまづさ【玉梓・玉章】名詞:①使者。使い。②便り。手紙。消息。 ⇒参考 「たま(玉)あづさ(梓)」の変化した語。便りを運ぶ使者は、そのしるしに梓の杖を持ったという。(学研)ここでは①の意

 

 

■巻四 五二二歌■

五二二から五二四歌までの三首の題詞は、「京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 卿諱日麻呂也」<京職(きやうしき)藤原大夫が大伴郎女(おほとものいらつめ)に贈る歌三首 卿、諱を麻呂といふ>である。

(注)藤原大夫:藤原不比等の第四子

(注)諱【いみな】:① 生前の実名。生前には口にすることをはばかった。② 人の死後にその人を尊んで贈る称号。諡(おくりな)。③ 《①の意を誤って》実名の敬称。貴人の名から1字もらうときなどにいう

 

◆「▼」嬬等之 珠篋有 玉櫛乃 神家武毛 妹尓阿波受有者

      (藤原大夫 巻四 五二二)

    「▼」は、女偏に「感」と書く。「▼嬬」で「をとめ」と読む。

 

≪書き下し≫娘子(をとめ)らが玉櫛笥(たまくしげ)なる玉櫛の神(かむ)さびけむも妹(いも)に逢はずあれば

 

(訳)をとめの玉櫛笥(たまくしげ)に納めてある玉櫛の神さびているように、私の方はずいぶん古ぼけたじいさんになったことだろうね。あなたに長いこと逢わずにいるから。(同上)

(注)たまくしげ【玉櫛笥・玉匣】名詞:櫛(くし)などの化粧道具を入れる美しい箱。※「たま」は接頭語。歌語。

たまくしげ 玉櫛笥・玉匣】分類枕詞:くしげを開けることから「あく」に、くしげにはふたがあることから「二(ふた)」「二上山」「二見」に、ふたをして覆うことから「覆ふ」に、身があることから、「三諸(みもろ)・(みむろ)」「三室戸(みむろと)」に、箱であることから「箱」などにかかる。(学研)

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その345)」で紹介している。

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■巻六 九九〇歌■

題詞は、「紀朝臣鹿人跡見茂岡之松樹歌一首」<紀朝臣鹿人(きのあそみかひと)が跡見(とみ)の茂岡(しげをか)の松の樹(き)の歌一首>である。

 

◆茂岡尓 神佐備立而 榮有 千代松樹乃 歳之不知久

       (紀鹿人 巻六 九九〇)

 

≪書き下し≫茂岡に神(かむ)さび立ちて栄えたる千代松の木の年の知らなく

 

(訳)茂岡(しげおか)に神々しく立って茂り栄えている、千代ののちを待つというの木、この木の齢の見当もつかない。(「万葉集 二」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

(注)千代松の木:千代の後を待つという松の木。(伊藤脚注)

 

 

■巻七 一三七七歌■

◆木綿懸而 祭三諸乃 神佐備而 齋尓波不在 人目多見許曽

       (作者未詳 巻七 一三七七)

 

≪書き下し≫木綿(ゆふ)懸(か)けて祭るみもろの神(かむ)さびて斎(い)むにはあらず人目(ひとめ)多(おほ)みこそ

 

(訳)木綿(ゆう)を懸けて祭るみもろの神、その神さまらしく構えて穢(けが)れを避けているわけではありません。人目が多いからです。(同上)

(注)ゆふ【木綿】名詞:こうぞの樹皮をはぎ、その繊維を蒸して水にさらし、細く裂いて糸状にしたもの。神事で、幣帛(へいはく)としてさかきの木などに掛ける。(学研)

(注)神さびて:ここは、神様ぶっての意。(伊藤脚注)

(注)斎(い)むにはあらず:男を避けることの譬え。(伊藤脚注)

 

 

■巻十一 二四一七歌■

◆石上 振神杉 神成 戀我 更為鴨 

      (作者未詳 巻十一 二四一七)

 

(書き下し)石上 布留の神杉(かむすぎ) 神さびて 恋をも我(あ)れは さらにするかも

 

(訳)石上の布留の年古りた神杉、その神杉のように古めかしいこの年になって、私はあらためて苦しい恋に陥っている。(「万葉集 三」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)

(注)上二句は序。「神さびて」を起こす。(伊藤脚注)

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その54改)で紹介している。(初期のブログであるのでタイトル写真には朝食の写真が掲載されていますが、「改」では、朝食の写真ならびに関連記事を削除し、一部改訂いたしております。ご容赦下さい。)

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■巻十五 三六二一歌■

◆和我伊能知乎 奈我刀能之麻能 小松原 伊久与乎倍弖加 可武佐備和多流

       (遣新羅使 巻十五 三六二一)

 

≪書き下し≫我(わ)が命(いのち)を長門(ながと)の島の小松原(こまつばら)幾代(いくよ)を経(へ)てか神(かむ)さびわたる

 

(訳)我が命よ、長かれと願う、長門の島の小松原よ、いったいどれだけの年月を過ごして、このように神々(こうごう)しい姿をし続けているのか。(同上)

(注)わがいのちを【我が命を】[枕]:わが命長かれの意から、「長し」と同音を含む地名「長門(ながと)」にかかる。(weblio辞書 デジタル大辞泉

(注)かみさぶ【神さぶ】自動詞:①神々(こうごう)しくなる。荘厳に見える。②古めかしくなる。古びる。③年を取る。 ※「さぶ」は接尾語。古くは「かむさぶ」。(学研)ここでは①の意

 

 この歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1618)」で紹介している。

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 「神々しい」といった言い回しは、何となく表面的な表現に思えるが、「神さび」というと、内部のエネルギーをも包含した重々しさをかんじさせる。時代を経て、神とか仏とかに関わる機会も薄れ、信仰そのものもある意味形骸化していることは否めないので言葉の使われ方も変化してくるのは当然といえよう。

 万葉集はそういった意味で、言葉の歴史的メモの役割も果たしている。かかる言葉にも折に触れ注目していきたいものである。

 

 

(参考文献)

★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)

★「万葉集 一」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「万葉集 二」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「万葉集 三」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「万葉集 四」 伊藤 博 著 (角川ソフィア文庫)

★「万葉植物物語」 広島大学附属福山中・高等学校/編著 (中国新聞社)

★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」

★「weblio辞書 デジタル大辞泉

★「weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版」